管理栄養士・尾澤真紀さんのいるジュニア栄養相談室には毎日、ジュニアアスリートが食事や栄養について質問や疑問を持って訪れます。今日来たのは、陸上部に所属する高校2年生の男子、ワタルくんです。

ワタルくんが所属する陸上長距離部は、今年の4月から毎月体組成を測定し、ワタルくんは結果をアプリに入れて、自分の体組成の変化を見るのを楽しみにしています。陸上長距離部の中ではやや大きめの体型ですが、「減量すれば軽くなってタイムを縮められる」と聞いたことがあるということで、アドバイスを聞きに来ました。

相談室ではまず、身長・体重を計測します。

ワタルくんの身体データ
17歳男子、身長170cm、体重60kg、体脂肪率13%、種目系別身体活動レベルPAL2.50(持久系)、1日のエネルギー消費量3719kcal

※皆さんもまずは自分のエネルギー消費量を計算してみましょう。今回は、除脂肪体重から推定する国立スポーツ科学センター(JISS)方式で計算しましょう。詳細はコチラのページへ

多分食べ過ぎ?体重・体脂肪が多い原因

ワタルくん こんにちは。

尾澤 こんにちは。最近、走ってるときによく会うね。今日はどうしたの?

ワタルくん 4月から体組成計測が始まって半年たったじゃないですか。僕って、みんなより体重も体脂肪も多くて、増加傾向なんです。

尾澤 それは計画的に増量しているというわけではなく?

ワタルくん いえ、多分食べすぎなんだと思います。

尾澤 カロリーオーバーね。もしかしたら他にも原因があるかもしれないけど?

ワタルくん 僕、減量したいんです。「減量すればタイムが縮まる」と聞いたことがあります。これから記録会や大会があるので、それまでに減量したいんですけど、できますかね?減量なんてしたことないから自分にできるのかなって…。

尾澤 今10月下旬で11月、12月…。シーズン中だし、急激な減量はコンディションを落とす可能性もあるから、無理なく計画していこうね。計算上の話をすると、体脂肪1kgあたりのエネルギーは約7500kcal。1カ月で1kg減量しようとすると、1日あたり250kcalを運動で消費するか、食事・飲み物からの摂取を控えるかで達成できるよ。

ワタルくん よくわからないけど、できそうな気がします。無理をせず頑張ります。

間食が高カロリー、成分表示の見方もチェック

尾澤 さっき、ワタルくんは食べすぎと言ってたけど、補食以外の間食が多いのかな?

ワタルくん そうですね。授業の休み時間には売店でシュークリームとか、クリームが入ったドーナッツとか、甘い物を買って食べていますし、寝る前もおなかがすくと、家にあるものをあさっています…。心を入れ替えないと!

尾澤 シュークリームは1個250~350kcalもあるし、クリーム入りドーナッツもそのくらいのカロリーはあるので、それを食べないだけで250kcalのカットはできちゃうからね。まずは間食の内容を見直すところから始めよう。ところで、何を持ってるの?(ワタルくんが持っている紙パックを指さして)

ワタルくん コーヒー牛乳(コーヒー入り乳飲料、500ml)です。僕、大好きでほぼ毎日飲んでます。

尾澤 甘党なんだね。パッケージには何kcalって書いてある?

ワタルくん えーっと…95kcalです。

尾澤 うそー、見せて! ほら、ここに「コップ1杯(200ml)」って書いてあるじゃない。ということは、500mlだと?

ワタルくん 500mlだと237kcal!! ということはいつも間食でトータル500kcalをとっていたってこと?

尾澤 問題点が見つかったね。間食は200kcalに抑えよう。

ワタルくん 飲み物はお茶にします。おすすめの甘い物ってありますか?

尾澤 ものにもよるけど、「和菓子」が良いんじゃないかな?

間食のエネルギー(カロリー)の図。e-ヘルスネット 間食のエネルギー(カロリー)より(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-013.html)
間食のエネルギー(カロリー)の図。e-ヘルスネット 間食のエネルギー(カロリー)より(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-013.html)

あとは、コンビニや売店で買う前に裏面の栄養成分表示を見るクセをつけて。ただ、さっきのコーヒー入り乳飲料のケースのように、500mlの商品でありながら200mlあたりの栄養成分表示をしているものもあるから、単位だけは注意してね。

食事でのポイントは?

ワタルくん ご飯の量も減らせば、もっと減量もできるのかな?

尾澤 まずは間食を見直して、経過を見ていこう。陸上選手にとってご飯からのエネルギー補給は大事だからね。甘い物もご飯も糖からできていて、これらを食べると血糖値が上昇するので、「インスリン」という血糖値を下げるホルモンが分泌されるんだけど、このインスリンには、エネルギーとして利用できなかった分の糖(ブドウ糖)を脂肪細胞に蓄えるはたらきもあるんだ。甘いお菓子やジュースは、ご飯(お米)に比べて血糖値が急上昇しやすいので、インスリンが大量に分泌されて余った糖(ブドウ糖)が脂肪に変換されていたんだね。

ワタルくん カロリーオーバーだけでなく、さらに太りやすいことしてたんだね。もっと早く聞きに来れば良かった、半年前に戻りたい…。

尾澤 いや、今知って良かったね。「思い立ったが吉日」で、次回の体組成測定を楽しみにしてるよ。普段の食事では、「余分な脂肪は抑える」ことと「食物繊維」を意識してとって欲しい。野菜はよく食べる?

ワタルくん 好きではないですけど、出されたら食べます。食物繊維は野菜に多いんですか?

尾澤 野菜、キノコ、海藻などに多いよ。食物繊維は余分な脂肪や糖の吸収を抑えてくれるから、しっかりとってね。

ワタルくん おじいちゃんが畑で育てた野菜をいつも持ってきてくれるので、しっかりとります!

尾澤 それは、おじいちゃんも喜ぶね!

吉田トレーナー お菓子は「絶対ダメ」ではなくて、リラックスしたいときやご褒美とか、メリハリつけてとれば良いと思うよ。私もお菓子は好きだけど、メリハリは大事にしている。高校の売店は誘惑が多いから気をつけてね! 間食を変えると体組成の変化がみられると思うし、パフォーマンスも変わってくると思う。食への意識もこれから変わって来そうだし、楽しみにしてるね!

食物繊維がとれる、キノコと根菜類を使ったレシピ

今回は、「キノコと牛肉の塩麹炒め」を紹介します。

秋が旬で、うま味が強いエリンギとシメジのキノコ類と、ゴボウとニンジンの根菜類を塩麹で漬けた牛肉と一緒に炒めました。主菜に野菜を合わせることで、コンディショニングに必要な食物繊維やビタミンをとることができます。

今回は、牛肉の中でも比較的低脂質な「かた肉」を使いましたが、塩麹で漬けることでうま味を引き出し、しっとりとした食感になります。陸上長距離選手に必要な鉄もとれるレシピになっています。

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