指定難病のパーキンソン病患者のリハビリを目的としたフィットネスプログラム「ロックステディボクシング(RSB)」の普及イベントが、このほど東京・大田区の田園調布せせらぎ館で行われ、約20人の患者が集まり、約2時間体を動かした。
主催は、自身もパーキンソン病患者である管理栄養士の山口美佐さん。山口さんは日本ではただ1人、当事者でありながらRSBの公認コーチ資格を保持しており、都内で定期的にレッスンを開催している。「もっと多くの人に、RSBのことを知って欲しい」として広く呼びかけたところ、若年性で発症した患者、初めてグローブをはめる患者も多く参加。それぞれ自分のペースで動きながら「すごく楽しかった。またやってみたい」と笑顔を見せていた。
米国発祥、世界17カ国で展開されるプログラム
パーキンソン病は現在、65歳以上の100人に1人がなるとも言われ、珍しくない病気になってきた。今のところ根本的な治療法はないものの、薬物療法や外科手術などがあり、薬の効果を上げて生活の質を高めるためにも栄養と運動は大切だ。
RSBは2006年に米インディアナポリスで始まったプログラム。米国を中心に世界17カ国で展開されており、日本には2018年に紹介され、現在11カ所に拠点がある。ボクシングといっても打ち合いではなく、コーチが構えるミットへの打ち込みを行うもので、パーキンソン病の運動症状(すくみ足、振え、無動、姿勢反射異常など)や非運動症状(睡眠障害、うつなど)にアプローチするものとなっている。
この日は、パーキンソン病支援団体「NPO法人コントロールPD(パーキンソン病)」代表理事の津野明美さん、同理事で日本に当プログラムを持ち込んだ米国理学療法士で、RSB WTS JAPAN代表の坂井美穂さんも神戸から駆けつけ、コーチとしてミットを構えた。
坂井さんはRSBの効果について次のように説明した。「例えば、患者さんの多くは人混みで人を避けることができず、立ちすくむことがありますが、RSBのウェービングや横へのステップは、患者さんが苦手とする動きを取り入れたものになっています。加えてボクサーでない限り、グローブをはめてパンチを出すということは初めての体験。『できない』ことが増える中、『できる』喜びを感じてもらえることで、ストレス発散にもなりますよ」。
津野さんも「病気になると、患者さんはどうしても自分の行動を抑えてしまう傾向にあります。まだまだ可能性はあるのに…。もし、自分の力の5割程度しか出していないのだとしたら、私たちは10割発揮できるようなお手伝いをしていきたい」とRSBをはじめ、パーキンソン病患者への支援について熱く語っていた。
実は多いエネルギー消費量、栄養不足を防ぐ
患者の多くは筋固縮や振えなどでエネルギー消費量が多いのに、食事量が不足してやせていく人が多いという。山口さんは「そうなると薬の効き目も弱まるし、フレイルやサルコペニアの原因になったり、他の病気との合併症を起こしたりする」として、日頃から食事の大切さを説いている。この日はアスリート仕様の手作りスポーツドリンクや、糖質とタンパク質をとれる補食のパンを提供していた。
イベントの最後では、患者もコーチも全員で輪になって声を合わせた。「1人じゃない! 仲間がいる!」 思いをつなげ、励まし合う姿があった。コーチやスタッフらは今後もイベントなどを通じてPD患者と家族、一般の方への相互理解や啓発を続けていきたいとしている。
【アスレシピ編集長・飯田みさ代】
■RSB TOKYO(コーチ・山口美佐)
・日時=毎週土曜日13時半~15時
・場所=東急東横線多摩川駅近辺
・会費等=年会費1万2000円、入会金1万2000円(キャンペーン時期あり)、回数券1万2000円(4枚×3000円)は4カ月以内に使用(体調にあわせて無理なく通えるよう)
・その他=体力測定、外部トレーナーによるトレーニング、管理栄養士監修のお弁当のランチ会などあり
・問い合わせ=https://lin.ee/HQ2MDw4
■NPO法人コントロールPD
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https://www.controlpd.org/