過酷な減量中のボクサーの食事は

強くなるために体重を増やさなければいけない力士とは対照的に、試合を前に過酷な減量を強いられるのがボクサーです。

プロボクシングには、体重が47・62㎏以下のミニマム級から90・72㎏超のヘビー級まで17の階級があります。階級が1つ違うだけでパンチの威力が数段違うといわれ、軽量級と重量級の選手が試合をするのは命にも関わることなのでありえません。

体重はそれほど重要な要素であるために、試合の前日には必ず計量が行われます。制限体重を1gでもオーバーすると2時間後に再計量となります。それでも体重が落ちなければその試合は中止になったり、中止にはならなくとも出場資格の停止などのペナルティが課せられます。減量の失敗は絶対に許されず、計量の数日前から絶食したり、計量の24時間前からサウナ風呂で汗をかいて水分を抜いたりと、選手も必死なのです。

ボクサーは減量の幅をできるだけ小さくするために、ふだんから体重の管理はしていますが、ほとんどの選手が、試合の1か月ほど前から計量の日まで急速減量に入ります。

「なぜ、減量するのか。通常体重の階級に上げて戦えば、無理して減量する必要もないのに」とだれもが思いがちですが、体重が重い(体格が大きく、筋量も多い)ほうが、くりだすパンチの力も、相手のパンチを防御する耐性も強いからです。

例えば、フライ級(体重50・80㎏以下)の試合で、通常体重が55㎏で5㎏減量したA選手と、通常体重が50㎏以下で減量しなかったB選手が対戦した場合、A選手のほうが有利なのです。なぜなら、公平性を欠きますが、A選手は計量にパスした後に食事で体重の回復ができ、リング上ではB選手の体重を上回ることができるからです。

高たんぱく質・低脂肪の食事が基本

減量中の食事メニューは、高たんぱく質・低脂肪が基本です。選手によってさまざまですが、肉はおもに鶏のささ身や胸肉、そして豆腐、納豆、豆乳などの豆類、卵、メカブやモズクなどの海藻類、野菜サラダなどをメインに、エネルギー補給のために、ごく少量のごはんやパスタなどで糖質をとります。トレーニングによって減った分がリバウンドしないように食事の量を減らしていくと体重も減りにくくなり、その分食べる量も減ってきます。水分も体重増につながるので、のどが渇いても何も飲まず、うがいで凌ぐほどです。

こうして、過酷な減量を経て計量をパスした後、翌日の試合までの食事の目的は、たんぱく質と糖質の摂取による体重の回復とエネルギーの補給、脱水症状を改善するための水分補給です。そのために好まれるのが、鶏肉・野菜・卵・米を使った雑炊や、親子丼などの丼物ですが、いずれにしても、巨大なステーキといった消化の悪いものは口にしないのが原則のようです。

(つづく)