これまでのコラムで、加齢とともに体が変化し、太りやすくなったと感じる方が多いものの、基礎代謝はそれほど低下しないこと、男性は年代が上がるにつれ、1日の歩数が低下している現状などを説明してきました。

しかしそうとはいえ、40、50代の女性では、歩数は減っていないが、20代の頃のように体重が減らないと感じている人も多いのではないでしょうか。それは「ホルモン」の減少の影響かもしれません。

ホルモンの乱れで体重の増減も

ホルモンは「内分泌」と表現され、多くは脳からの指令により分泌量が調整され、自律神経と連携しながら体の様々な機能の調整をしています。このバランスが乱れたり、加齢とともに分泌が低下したりすることで、体調が崩れたり、体重が増減します。

ホルモンは現在、100種類以上見つかっており、今後も増えると思われています。その中で、基礎代謝量や消費エネルギーに関与するホルモンを説明しましょう。

基礎代謝量に関与するホルモン

成長ホルモン

成長ホルモンは脳の下垂体前葉から分泌され、骨や筋肉の成長を促すだけでなく、体の中の代謝を調整する働きがあります。成長期が終わっても分泌され、体の傷ついた部分を修復し、老化の進行を抑制する働きもあるため、「アンチエイジング」のホルモンとして注目もされています。

成長期をピークに低下し、30、40歳代では成長期前期の50%、60歳では30%に低下します。体を作る、修復するためにはエネルギーが必要であり、それが行われないということは消費エネルギーも低下します。

成長ホルモンの分泌が活発になるのは夜間で、特に就寝30分後に分泌量が増加します。夜間勤務のある人、睡眠不足の人、生活習慣が乱れている人は分泌量が低下し、太りやすくなります。分泌量を増やすためにも、質の良い睡眠をとることが大切です。

性ホルモン

女性ホルモンであるプロゲステロン、エストロゲンは卵巣から分泌されます。妊娠、出産に関与するだけでなく、女性らしい体を維持し、肌を整える、血管を守る働きもあります。30歳前後をピークに卵巣機能が低下する40歳頃から分泌が低下し、閉経期に急速に低下します。

女性ホルモンの分泌量が低下すると内臓脂肪がつきやすくなり、悪玉コレステロールが上昇し、骨形成が低下することで骨密度も低下します。また、女性ホルモンの分泌低下は、脂肪の分解を促進するノルアドレナリンの分泌を低下させるため、脂肪がついて落ちにくくなるのです。

一方、男性ホルモンであるテストステロンは95%が睾丸(精巣)の中で、5%が副腎で作られます。生殖機能に関する以外に、筋肉や骨格を形成する働きがあります。20代をピークに40~60歳頃にかけて緩やかに分泌が低下し、筋肉がつきにくくなる反面、脂肪がつき、メタボリックシンドロームになりやすくなります。

また、テストステロンはやる気など行動面にも関与しています。分泌が低下すると、うつ症状など男性更年期障害の原因にもなりやすく、活動量が減り、より消費エネルギーも低下します。

甲状腺ホルモン

甲状腺ホルモンは、のどぼとけの下にある甲状腺で作られ、代謝に直接関与します。分泌が低下すると基礎代謝が低下し、過剰になると基礎代謝が上がります。

そう考えると、甲状腺機能が亢進した方がやせるため良いように思いますが、心拍数が増えて動悸、発汗が増え、不眠になるなどの症状が現れます。甲状腺機能が低下すると、心拍数が減って体が冷え、便秘になり、顔面がむくみ、体重が増えるので、このホルモンは過剰でも不足でも好ましくなく、バランスが重要なのです。甲状腺機能亢進症や低下症の場合は、甲状腺ホルモンの量を調整する治療が必要です。

その他のホルモンにも代謝や脂肪蓄積に関わるものがあります。ホルモンなど内分泌系を整え、体重管理に役立たせるには、やはり栄養と睡眠と運動が大切です。

管理栄養士・今井久美