年を重ねるにつれ、やせにくくなったと感じる人も多いでしょう。加齢と共に基礎代謝が低下し、消費エネルギーも低下するためです。筋肉量が低下すれば、なおさらです。

今回は、加齢に伴い起こる体の変化と、それに対する対策を解説します。

消化吸収に時間がかかるが、吸収率は低下しない

年齢と共に「油脂の多いものは胃もたれするようになった」と感じる人も多くいますが、意外にも消化吸収率は加齢による変化は少なく、胃もたれするのは消化吸収に時間がかかるようになったからです。これは胃腸の動き(ぜんどう運動)の低下によるもので、消化吸収される量はほとんど減りません。従って、食べたものはエネルギーになり、太るのです。

この対策としては、「よく噛んで食べる」「夕食の時間を早める」ことが有効ですが、働き盛りの年代では、夕食時間を早めることは難しいでしょう。夕食は油脂の少ないものにし、揚げ物や焼肉など油脂の多い食事は、休日で早めの時間に食事がとれるときに食べることをおすすめします。

※胃もたれ予防は「逆流性食道炎のコラム」を参考にしてください。

肉や魚などタンパク質の量は増やす

消化吸収率は低下しないものの、肝臓や腎臓など各臓器の機能は低下します。タンパク質は消化されてアミノ酸になり吸収され、その後、肝臓で様々なタンパク質に合成されて全身に届けられます。

肝臓の機能低下によりタンパク質の合成能力が低下することで、タンパク不足になりやすくなります。筋肉量を減らさないためにも、タンパク質が多く、アミノ酸スコアの高い肉や魚、卵は不足しないように食べましょう。

サラダよりも温野菜で、食物繊維は増やす

腸のぜんどう運動が低下することにより、便秘になりやすくなります。理由は、食べたもののカスが大腸に留まる時間が増えることで、水分が大腸で吸収されて便が硬くなること、また腹筋など排便に関係する筋肉量が低下したり、機能が低下したりするためです。

不溶性食物繊維も便秘には有効ですが、水溶性食物繊維の方が腸内細菌のエサになるため、快便には有効です。野菜は生よりも加熱することで水溶性食物繊維が増えます。サラダも良いですが、温野菜にして量を増やしましょう。

水分は喉が乾く前に、回数増やして摂取

体内の水分量(割合)は加齢と共に低下し、一般的には男性よりも女性の方が水分量が少ないと言われています。男性は水分を多く含む筋肉が多く、女性は水分の少ない脂肪が多いからです。

出入りする水分量も減っていきますが、蓄えが少ない分、脱水になりやすく、特に加齢と共に喉の渇きも感じにくくなります。1度にたくさん飲むのではなく、回数を増やして水分を摂りましょう。

体の機能の多くは20歳頃がピークとなり、機能によって度合いは異なるものの、加齢と共に徐々に低下します。アンチエイジングも大切ですが、体に合わせて食事内容や食べ方を変えていくことも大切です。

管理栄養士・今井久美