「薬膳」「薬膳料理」という言葉を耳にしたことがあると思いますが、どのような料理かご存じですか。薬膳とは、東洋医学である中国伝統医薬学(中医学)の考え方に基づく食事の摂り方で、食事で病気を予防するという視点も持っています。今回は、食材を薬膳の視点から見ていきましょう。

即効性の西洋医学と原因追求の東洋医学

「西洋医学」は病気になった時に患部を診断し、症状に応じて即効性のある投薬治療を行いますが、「東洋医学」は体全体のバランスや患者の体質を診て、普段の生活から病気にならないように予防します(未病)。近年、東洋医学への注目が高まり、両方の長所を取り入れた効果的な治療の研究が行われています。

いまや日常生活でもストレスが多く、肌荒れや冷え性、肩こり、むくみなど、体の不調に悩む方も多いのではないでしょうか。こうした不調を改善し、健康な体づくりを促す食事のことを「薬膳」と言います。食事を通して身体の中から健康に、キレイになろうという発想です。日頃使っている食材の特徴を知り、上手に組み合わせれば、漢方生薬を用いずとも薬膳の効果を感じられます。

身体を冷やす食材と温める食材

暑い夏は外気とともに体温も上がり、脱水から熱中症になる可能性が高くなります。そのような季節を旬とする野菜は「身体を冷やす」効果があると言われています。暑い国が原産、もしくは暑い地域で育つものも、そのような効果が期待できます。

逆に冬が旬、もしくは寒い地域で育つものは「身体を温める」と言われています。今はスーパーに行けば1年中、様々な野菜や果物が売られており、「旬」を考えることが少なくなったかもしれませんが、食物の旬は理にかなっているのです。

旬の野菜を食べる効果

日本は春夏秋冬と四季があるので、野菜それぞれに旬があります。旬を迎えた野菜は、味がおいしくなるだけではなく、含まれる大切な栄養素の量もぐっと増えます(キューピーHP参照:https://www.kewpie.com/education/information/vegetable/season/)。収穫量も増えるので、新鮮でお手頃な価格で手に入れることができるものうれしい特徴です。

例えば、春野菜は冬の間に栄養やうま味を蓄えます。苦みが強い山菜には、苦味のもとになるポリフェノールやミネラルが豊富に含まれています。これらは、私たちの身体の新陳代謝を促進し、胃腸の働きを促し、老廃物や脂肪の排出を助けるとも言われています。

日本の夏は気温や湿度がとても高く、外気温と室内の温度の差に疲労を感じて食欲がなくなることも多々あります。そんなときは、夏が旬のキュウリやトマト、レタスなどがさっぱりしていて食べやすいでしょう。水分も多く、熱を取る効果もあるため、暑い夏にはピッタリです。スイカなどは利尿作用もあって、老廃物を排出します。

寒さが厳しくなる冬は白菜、ネギ、大根などが旬を迎えます。ブロッコリーや小松菜、ホウレン草も甘味が強くなります。冬は温かい料理が恋しくなり、特に煮込み料理や鍋料理をとてもおいしく感じます。そんな料理によく使われる野菜の旬は冬が多いことに気づくと思います。

サラダも、夏は夏野菜を中心に冷たい状態で、冬は冬野菜を中心に温野菜で食べるというように使い分けするとよいのではないでしょうか。

実は栄養価が高い冷凍野菜を活用して

今ではスーパーには生野菜だけでなく、冷凍野菜も多く出回っています。冷凍食品に抵抗がある選手もいるようですが、冷凍野菜は旬の時に収穫し、急速冷凍するので、栄養価は高いと言われています。通年で価格も安定しており、保存が効き、使いたい分だけ使えるなど利点がたくさんあります。一度、火を通してあるものも多いので時短にも役立ちます。

「バランスの良い食事」は色々なものを食べることが大切で、薬膳の考え方にもつながります。食材の「旬」を考え、食事に取り入れられるようになると、一層良いコンディションを維持できるようになるはずです。

今回紹介するのは「牛乳くずもち」です。乳製品自体はどちらかというと寒い時に身体を温める効能があるようですが、夏は気温の変化などでとかく食欲が落ちがちです。食欲が落ちるとタンパク質も不足してしまうので、くずもちのようにのど越しがよく、食べやすいものだと上手に不足を補うことができます。

きな粉も大豆からできているのでタンパク質を多く含みます。黒蜜は上白糖より糖分が少なめで、鉄やカルシウムなどビタミン・ミネラルを多く含みます。

女子アスリート/管理栄養士・佐藤郁子