月経周期がおかしくなったり、月経中に生理痛や色々な症状が現れたりした場合、婦人科を受診すると治療してもらえます。しかし、10代の選手やその保護者にとっても「婦人科」は、妊娠や婦人科系の病気の人が行くところという印象が強く、抵抗があって行きづらいという人が多いものです。

そこで、婦人科ではどんな検査をしてどんな治療をするのか、2回に分けて紹介していきます。今回は「検査方法」に焦点を当てていきます。

内診しない場合も多い検査の中身

実際、婦人科を訪れているのは大人の人がほとんどで、10代の学生は少数ですから躊躇する気持ちはわかります。実際、高校卒業するまでは「小児科」の分類になるので、受診するのは場違いな感じもしますが、症状にあった検査・治療ができる専門外来を受診することは当たり前のことで、最も効率が良いのです。

また、婦人科に行くと必ず内診(膣内に器具を入れての検査)されると思っている方もいると思いますが、検査にもいろいろあり、内診をしないことも多くあります。特に10代に対しては配慮し、意向をくみながら対応します。

受診の流れと検査の内容

私が勤務している順天堂大学医学部附属順天堂医院・浦安病院の「女性アスリート外来」の例を取り上げていきます。

まず、問診票に記入してもらいます。その後、体組成測定、診察、血液検査、骨密度測定、子宮の状況の確認など必要な検査を行います。

1、問診

問診票はどこの科にもありますが、選手のことを知るために記入してもらいます。今抱えている諸症状に関する事項のほかに、行っている運動の種目や競技歴(いつからやっているのか)、1日の練習時間、成長期、既往症(これまでにかかった病気やけが)など様々な項目を聞き取れるようになっています。

なぜここまで細かく書いてもらうかというと、今の症状だけでは原因がわからないことが多い上に、症状が他の病気やけがに関連していることが多いからです。

2、身体計測

次に身長・体重・体脂肪率・体脂肪量・除脂肪量などを計測します。体組成計はメーカー・機種によって、結果は若干異なるものです。

3、診察

問診票を見て気になったことは、さらに医師が診察で確認を行います。選手のことをより深く知るためには、問診や診察でたくさんの情報を得たいので、診察はどうしても長くなります。「3分診療」などはあり得ません。

どんなに小さなことでも、治療の参考になることがありますので、「こんなこと言ったら笑われるかな」や「こんなこと必要ないか…」などと思わず、何でも話してほしいと思っています。そうやって得た様々な情報から、その選手に必要な検査を選んでいきます。

4、検査

検査には、次のようなものがあります。血液検査等は、一般の方(運動していない方)とアスリートでは基準が異なるので、アスリートの基準を用いて総合的に判断します。

血液検査
 血球…赤血球・白血球・ヘモグロビン・TIBC(総鉄結合能)など
 肝機能…AST・ALT・総蛋白・CK(クレアチン)など
 貧血…鉄・フェリチンなど
 腎臓…BUN(尿素窒素)・Cre(クレアチニン)など
 脂質…TG(中性脂肪)・T-cho(総コレステロール)など
 甲状腺ホルモン…TSH(甲状腺刺激ホルモン)・FT3(遊離トリヨードサイロニン)・FT4(遊離サイロキシン)など
 女性ホルモン…E2(エストラジオール:エストロゲン)・プロゲステロン(黄体ホルモン)・LH(黄体形成ホルモン)・FSH(卵胞刺激ホルモン)・プロラクチン・AMH(アンチミューラリアンホルモン)など
 男性ホルモン…テストステロン
 …BAP(骨型アルカリフォスファターゼ)・TRACP-5b(骨型酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ)・NTX(I型コラーゲン架橋 N-テロペプチド)・Ca・25OH-VD(ビタミンD)など

骨密度測定
 DEXA 法とは、Dual Energy X-ray Absorptiometry の略で、2種の異なるエックス線 を照射し、骨と軟部組織の吸収率の差で骨密度を測定する方法です。被ばく量は極めて少なく、迅速かつ精度の高い測定ができ、骨密度測定の標準とされています。腰椎と右の大腿骨を測定します。骨密度は骨量やYAM値(若い人と比較した値)ではなくZスコア(同年代の人と比較た値)を用いて判断します。

超音波検査
 子宮の状態を確認するために超音波検査(エコー)を行います。子宮の大きさや子宮内膜の状態を確認します。細い棒を膣に入れて検査することが多いですが、おしりから入れる場合もありますし、どちらも嫌な場合はおなかの上から行うこともあります。検査は強制ではありませんので、嫌な場合は無理せず断っても問題ありません。

5、食事記録(栄養指導)

これらに加えて食事記録を取り、解析することで栄養状態がわかります。栄養指導では栄養状態に問題がある場合に改善に向けて、選手とともに改善策を考えます。

どうですか? 何をするのかわかると少しは不安が改善されるのではないでしょうか。

次回は、治療法についてお話していきます。

今回紹介するレシピは「豚肉のチーズピカタ」です。豚肉にチーズを挟んで卵をつけて焼くことで、3種類のタンパク質が摂取できます。

メインの主菜はもちろん、冷めてもおいしいのでお弁当のおかずにピッタリです。豚肉は薄いものを選ぶと火の通りも早く、固くなりにくなります。

女子アスリート/管理栄養士・佐藤郁子