成長期や運動をしている選手が貧血を指摘された場合、「鉄」を補うため、食事で鉄を多く含むものを摂ったり、薬を服用したり、サプリメントをとったりすることが多いと思います。しかし、鉄の摂取量が満たされているにもかかわらず、貧血が治らないケースが見受けられます。なぜでしょうか?

次のことが思い当たる選手は、是非改善していきましょう。

必要なエネルギーや栄養素が食事から摂れていない

貧血とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンという物質が少なくなった状態です。赤血球の合成にはエネルギーが必要ですが、練習によるエネルギー消費が多いアスリートは、そもそも日常生活や練習で使う十分なエネルギーが摂れていないことが多々あります。

10代の女子アスリートは、成長や月経によって貧血になりやすいともいえます。鉄を意識して摂る前に補食をとったり、主食を増やしたりと、練習分のエネルギーをしっかり補給していきましょう。

また、赤血球の元になるのは鉄だけではありません。タンパク質が不足していても貧血になります。

タンパク質不足のアスリートの食事例として、朝食や昼食、時に両方の主菜が少ないことが挙げられます。朝食はトーストだけ、昼食は麺やおにぎりのみにはなっていませんか? 糖質補給は大切ですが、食事の内容も重要です。毎食、栄養バランスを整えた食事を意識しましょう。

競技特性や消化吸収に問題がある場合

長時間走ったり、跳躍が続いたりなど競技特性や練習状況によって、足裏の衝撃から血液中の赤血球が破壊される「溶結性貧血」の可能性もあります。この場合、練習量そのものを軽減したり、シューズや練習メニューを変更したりと、着地の際に赤血球が破壊されることを防がなければなりません。

また、練習が続くことで消化吸収がうまくいかない場合もあります。食事のたびに排便したり、常におなかを壊している状況では、食べたものがエネルギーとして吸収されにくいのです。まずは消化力を上げ、栄養を吸収できるように、状況を改善していきましょう。

身長の伸びがみられる場合

成長期は、体重だけでなく除脂肪量も増加します。筋肉や骨、内臓や血液などが増えるとエネルギー消費量も増えるため、運動するジュニアアスリートはさらに食事量を増やさなければなりません。主食、主菜、副菜とバランスを整え、必要な栄養素が十分補給できるように食事量を増やしていきましょう。

初経の時期を迎えると

小学校高学年から中学生になると、女子アスリートの多くは初経を迎え、意識的に鉄の補給量を増やさなければ足りなくなります。この時期は特に注意して、食事を変化させる必要があります。

同時に体重が増える時期でもあります。この体重増はその後の発育発達を大きく左右する大切なものですので、成長曲線で体重増だけを注目せず、必要な栄養をとりましょう。

貧血予防はまず、練習に見合ったエネルギー補給ができていることが前提となります。

今回紹介する「カラメルバナナトースト」は、食欲がない朝でも簡単に作ることができ、主食(パン)と果物(バナナ)の組み合わせで糖質が摂れます。油を使わないので、練習前の補食としてもお勧めです。

管理栄養士・上木明子