貧血予防のための6つの鉄則

貧血を予防するには、単に鉄だけをとればいいということではありません。「貧血予防のための6つの鉄則」があります。

鉄則1、エネルギーを必要量とっていること

どんなに鉄を多くとっていても、それを吸収し、使っていくための体の土台が整っていなければ、体内の鉄が不足してしまいます。日常生活や運動で使う量に見合ったエネルギーをとっていることが大切です。

エネルギーや炭水化物が不足すると、鉄が腸から吸収されるのを阻害したり、体内での鉄の再利用を減少させたりする「へプシジン」というホルモンの分泌が増えることが分かっています。日頃から疲れがとれない状態が続くときは、まずは自分の身体や運動量に見合ったエネルギーや炭水化物がとれているかどうかを確認してみることが大切です。

次の症状が出ている場合、エネルギー不足の可能性が考えられます。

エネルギー不足の可能性が考えられるケース
・体重の減少
・運動量(トレーニング・練習の強度、頻度)の増加
・女性選手の場合、無月経や月経不順
・モチベーションの低下
・胃腸の調子が悪い
・骨密度の低下 
※エネルギー不足が疑われる場合は骨密度測定を定期的に行うことが推奨される

鉄則2、鉄を多く含む食材を積極的に

鉄は血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの中心となる材料です。ヘモグロビンと酸素が結びつくことで、血液を通して全身の細胞に酸素が供給されます。

鉄が不足しているということは、全身に酸素を運ぶ能力が低下しているということです。細胞は酸素と栄養素を使ってエネルギーを作り出すため、酸素が行き渡りにくくなることでエネルギーがスムーズに作られず、細胞の働きが低下してしまいます。これにより、持久力が低下する、疲れやすさを感じやすいなどの症状が表れます。

鉄は元々吸収されにくい栄養素であるため、鉄の中でも吸収率が高い「ヘム鉄」を中心にとっていくことがおすすめです。ヘム鉄は赤身の肉や魚(レバー、豚や牛の赤身、マグロやカツオの赤身)などの動物性食品に豊富に含まれています。

アサリは吸収されにくい「非ヘム鉄」の割合も多いものの、ヘム鉄も含まれます。肉や魚からとれるヘム鉄と組み合わせて取り入れてみてください。

また、食事だけではどうしても補いきれない場合は、必要に応じて、摂りすぎに注意しながら鉄が強化された食品を活用してみても良いでしょう。

鉄が強化された食品
ヨーグルト、のむヨーグルト、チーズ、ふりかけ、野菜ジュース、エネルギーゼリー、エネルギーバーなどに鉄が強化された商品があります。

鉄則3、タンパク質を十分にとる

ヘモグロビンは鉄だけでなく、タンパク質も材料としています。酸素を供給するために重要なヘモグロビンの量をしっかりと保ち、働かせるためには、体重や体作りの目的にあったタンパク質量を食事や補食で、1日数回に分けて摂取することが大切です。

鉄則4、ビタミンCを組み合わせる

さらに、鉄やタンパク質の吸収を促すビタミンCを組み合わせると効果的です。ビタミンCは加熱すると失われやすいものでもあるため、生で食べられる果物からビタミンCをとることがおすすめです。

ビタミンCが多い代表的な果物はゴールドキウイ、柿、イチゴや、オレンジ、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘類です。加熱をしてもビタミンCが失われにくいイモ類(サツマイモ、ジャガイモ)から摂取するのも良いでしょう。

野菜では、ピーマン、パプリカ、ブロッコリー、などに多く含まれます。主に植物性食品に多く含まれる吸収率の低い「非ヘム鉄」と組み合わせると、その吸収率を高めることができます。

ビタミンCの組み合わせ例
・デザートにビタミンCが多い果物をつける
・ビタミンCが多い果物で作ったスムージーをとる
・みそ汁にサツマイモやジャガイモを入れる
・食事の時にレモン水を飲む  

鉄則5、鉄摂取のタイミングを考慮する

鉄の吸収を阻害する「へプシジン」の分泌は夕方にかけて増加するため、昼食や夕食よりも、朝食時に鉄を積極的に摂取する方が吸収率が高まります。また、激しい運動をした数時間後にはへプシジンの分泌が高まり、鉄が吸収されにくくなるともいわれているため、鉄の摂取を強化していく時は摂取タイミングも考慮して栄養補給計画を立てた方がいいでしょう。

鉄則6、コーヒー、緑茶、紅茶に注意する

コーヒー、緑茶、紅茶には鉄の吸収を妨げるタンニンが含まれています。そのため、食事の前後にはこれらの飲み物を控えるようにしましょう。

貧血予防のための献立一例

参考:
・Mountjoy M. et al., International Olympic Committee (IOC) consensus statement on relative energy deficiency in sport (RED-S): 2018 Update. Int J Sport Nutr Exerc Metab, 1;28(4):316-331, 2018
・McCormick R. et al., (2019). The impact of morning versus afternoon exercise on iron absorption in athletes. Med Sci Sports Exerc, 51(10):2147-2155, 2019

管理栄養士・廣松千愛