順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科の宮本恵里助教、福典之先任准教授らの研究グループは7日、アスリートを対象としたケガの遺伝的要因に関する大規模調査・解析結果として、遺伝的に肉離れしにくい女性アスリートは疲労骨折のリスクが高いことを発見したと発表した。

研究発表を行う順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科の宮本恵里助教

日本人アスリート1667人(男子1136人、女子531人)を対象に、疲労骨折や非接触性の肉離れ等の筋傷害の受傷歴、唾液もしくは血液から得られたDNAをもとに解析した「I型コラーゲンα1鎖遺伝子多型」と呼ばれる遺伝子の関連を調査した。

人はAA型、AC型、CC型の3つの型のうちいずれかに当てはまるものだが、CC型とAC型の女性アスリートは疲労骨折の受傷歴を有する人が多く(17.8%)、筋傷害の受傷歴を有する人は少ない(9.9%)一方で、AA型の女性アスリートは疲労骨折の受傷歴を有する人が少なく(9.0%)、筋傷害の受傷歴を有する人は多い(18.6%)という結果となった。これにより、疲労骨折に対してはCC型やAC型が、筋傷害に対してはAA型がリスクとなることが明らかになった。

同研究グループは遺伝子多型と骨や筋の組織特性との関連も検討。その結果、CC型やAC型の女性は骨密度が低く、筋が軟らかい一方で、AA型の女性は骨密度が高く、筋が硬いことも分かった。ただ、これらの特性は女性だけに見られたもので、男性ではI型コラーゲンα1鎖遺伝子多型と外傷・障害や組織特性との関連は認められなかった。

さらに骨格筋においても詳細な分析を行ったところ、I型コラーゲンα1鎖遺伝子多型のCC型やAC型を有すると、骨密度が低く、筋が柔らかいことも分かり、女性アスリートは筋傷害のリスクは低い一方で、疲労骨折のリスクが高いことが遺伝的要因として明確になった。

スポーツ外傷・障害の予防は、アスリートが充実した競技生活を送るために極めて重要な課題だ。特に疲労骨折や肉離れの受傷率は高く、同じ練習や予防策を講じていても、ケガを繰り返す選手もいれば、全くしない選手もいる。事前に、個人の遺伝的体質によるスポーツ外傷・障害受傷リスクの高低を組織別に把握することができれば、より効率的な予防策を講じることができるとして、研究は進められていった。

同研究グループは「今後、さらに他の遺伝要因も明らかにすることにより、個人の遺伝的体質と競技特性を総合的に考慮したスポーツ外傷・障害予防法の構築を目指したい」とコメントしている。

なお、本論文はMedicine&Science in Sports&Exercise誌のオンライン版に2021年3月12日付で公開された。

【アスレシピ編集部・飯田みさ代】