梨田昌孝氏(2019年6月21日)
梨田昌孝氏(2019年6月21日)

志村さんら死去に複雑な思い…運があった

-ICUをでて一般病棟に移ったのは入院から18日経過した4月17日です

梨田氏 すごくうれしかったです。でも、なんて言うんでしょうか…。入院してる間に、志村けんさん、岡江久美子さん、岡本行夫さんら著名人、大相撲の勝武士さんが亡くなったことを知りました。そういうのがあって「おれはこれでいいのかな…」と複雑な思いはありました。

-一命を取り留めたといっても、すぐに前向きにはなれなかった?

梨田氏 そうですね。ただそこは先生方が「これだけ重症で助かったのは、梨田さんがこれから果たさなきゃいけない役割があるからじゃないですか」と励ましてくれた。ここまで回復したのは奇跡だったようです。詳しいことはわからないが、基礎体力があったこと、生命力、それと運…。これは冗談でしょうが「梨田さんの人柄ですね」といわれ、初めて少しだけ笑うことができました。

-医師とも会話ができるまでになった時期ですね

梨田氏 ドクター、看護師さんも怖いと思うんです。でも腰が引けたり、いやがったりせず、ちゃんと向き合ってくれた。ドクターから「梨田さんが元気になったら、ぼくたちにとっても励みになりますから」といわれ、「よーしっ、頑張ろう」という気持ちになったものです。

-一般病棟でリハビリが始まりました

梨田氏 でもまだ自力で歩けないし、点滴もいっぱいしていた。フニャっとなってベッドに座ることもできない。腰に力、背骨に力が入らない。もちろん家族は面会もできません。部屋にいらっしゃる医師、看護師さんもみんなマスク、防護服、フェースシールドをつけてるのをみて、自分はまだまだなんだなと感じました。コロナってこんなにしんどいのかと、つらかったです。

アビガン、エクモは使わず、PCR検査は8回

-治療薬「アビガン」は使用しなかったようですね

梨田氏 あれは初期症状の患者に使うようで、先生からも「使ってません」と説明を受けました。人工呼吸器をつけた重症者は、まず飲める力がない。錠剤をくだいて点滴にしたりというのはできるらしい。エクモ(体外式膜型人工肺)も装着していません。

-回復に向かっている実感はあったのですか

梨田氏 人工呼吸器を外した後、のどが炎症していて、1週間は声が出なかった。いずれまたNHKで解説の仕事をさせていただくために必死に声をだす練習をしました。マスクは食事を摂るとき以外はつけっぱなしで、1日21、22時間はしてたのもつらく感じた。マスクは胸の後ろからゴムで固定され、これがすれて痛くて眠れなかった。

-PCR検査で陰性結果が2度続くことが退院の条件と知られています

梨田氏 そこまでいくのが大変でね。最初ドクターから「1度陰性になっても、次は陽性の確率が高い」と言われてたがその通りでした。18回も検査した患者もいたらしいです。わたしも鼻の奥の奥まで入れられ、コロナのカスなのか、徹底的に行われました。

-陰性結果が2度続いたのが5月6日です

梨田氏 トータルで8回検査を受けたが、それだけで2週間以上かかったことになる。陰性の後で陽性がでたときはため息がでます。陰性、陽性、陰性、陽性、陽性、陽性、陰性、陰性…。やっとです。それと同時に不整脈がでたのは、まずいなと思いました。

-今までなかったことですか

梨田氏 ええ、今までなかった症状でした。心房細動で機能低下したようです。一般的には血管に血栓が詰まって病気になるケースもあるみたいです。昨年12月に検診を受けてるので、そんな急に不整脈がでるはずがなかった。コロナの影響と思います。しかし、脳の検査も済ませ、今では不整脈も治って正常です。

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