じっとりとした暑さを感じるようになり、鹿児島では梅雨入りも聞かれる季節となりました。この季節の変わり目、なんだかやる気が出なかったり、だるさや疲労感など体調の悪さを感じたり、食欲がなくなったり…いわゆる“五月病”に悩まされている方もいらっしゃるかもしれません。

精神的に食欲がわかないときの工夫

そのような時に何を食べればいいの? とよく聞かれますが、「食べられるもの、好きなものを食べられる量だけ食べてみてはどうでしょう」とお答えします。なぜならば、五月病のように、メンタル面からもストレス対策が必要な状況で、「これを食べなければならない」「これは食べてはいけない」など、食事にまで強い制限が加わると、楽しいはずの食事自体がストレスになってしまう可能性があります。ですから、ストレスがかからない程度に、もしくはストレス発散になるような食事をして欲しいと思うわけです。

しかし、アスリートの場合、食事をとれない時期が長く続くと、パフォーマンスが下がるというリスクがあります。そこでリスクを負わないために、精神的、身体的に苦しい状況でも「食べられるもの」を用意しておくことが大切だと考えます。

体調が悪い時は、胃腸に負担をかけない、消化吸収の良いものがおすすめですが、精神的に食欲がわかない時はどうすればいいでしょうか。私は、目新しい料理や珍しい食材、きれいな彩りなど、日常と少しだけ違った工夫も有効だと思います。

芳醇な香りで甘酸っぱい「バルサミコ酢」

例えば、調味料の「酢」。疲労回復や食欲増進の効果があると知られている酢は、最近では、多くの種類が手軽に手に入るようになりました。特に私の住む鹿児島では、普通の米酢よりもアミノ酸が豊富に含まれる「黒酢」が人気です。

イタリア北部発祥の果実酢「バルサミコ酢」も注目されています。ブドウの果汁を煮詰めて濃縮し、木の樽で自然発酵して作られたもので、栄養学的な特徴としては、ブドウが原料となっているため、抗酸化物質であるポリフェノールが黒酢の約3倍も含まれています。バルサミコ酢を手に入れたら、少しなめてみてください。芳醇な香りと濃厚で甘酸っぱい味わいを感じることでしょう。

人気イタリアンでいつもと違った食卓に

そんなバルサミコ酢を使ったレシピとして、「牛肉のタリアータ風バルサミコソース」を紹介します。“タリアータ”とはイタリア語で「薄く切った」という意味です。焼いた牛肉を薄く切って、たっぷりの野菜と削ったパルミジャーノチーズでいただくイタリアの人気料理です。

今回は、バルサミコ酢にしょうゆを加えて、和風にアレンジしました。鉄分豊富な赤身の牛肉と、たっぷりの色彩豊かな野菜をバルサミコ酢の風味で楽しむレシピです。いつもと少し違った雰囲気の食卓作りに役立ててください。

KAGOSHIMA食×スポーツ/管理栄養士・今村佳代子