私たちがジュニアアスリートと接する上で重要視していることは、いずれ「食の自立」ができた選手になるということです。ジュニア時代の食事はほとんど自宅や寮で提供され、昼食は学校給食など、基本的には「出されたものを食べる」という状況ですが、大学生や社会人、プロ等に進むと、多くの選手は自ら食事を考え、準備し、食べていかなくてはなりません。

「食の自立」ができた選手になるために

食事の役割にも変化があります。ジュニア期では「身体を健全に成長させる」という目的が大きなウエートを占めていましたが、成長期を終えると、日々高度なトレーニングができる、疲労を素早く回復する、より競技に適した体づくりを行う、試合でベストパフォーマンスを発揮するといった目的にシフトします。

ジュニア選手にそのようなことを伝えてもなかなかピンとこない選手が多いのですが、現在、食意識の高いプロ選手はいつ、何をきっかけに行動へ移すようになったのでしょうか。選手たちの実際の声をお届けします。

プロ選手の実際の声から

(1)尊敬する選手を見て

尊敬する選手がトレーニングだけでなく、空き時間に身体のケアや食事についても意識的に取り組む姿を見たことがきっかけで、真似たり調べたりするようになった。

(2)年齢を重ねたことで

年齢を重ねると、以前ならすぐにとれていた疲れが抜けにくくなった。それが原因でケガをして戦線離脱したり、若手選手にポジションを奪われたりといった状況となり、「このままでは競技を続けられない」「変わらないといけない」と思うようになった。

(3)様々な経験をしたことで

今はインターネット、テレビや書籍などで様々な情報が手にできる時代。「○○が良い」「○○は体に良くない」と聞くと、自分でも色々試してみた。しかし、やっているうちに、それとは真逆の情報が出てきたり、やってみた結果、疲れやすくなったりと経験する中で、自分に合ったものを取り入れること、そのために「自分を知る」ことの重要性に気づき、意識が高まっていった。

元々意識が高かったわけではない

このように、現役のプロ選手も元々意識が高かったわけではなく、経験を積みながら意識を高めていったようです。ただ、「ジュニア時代に、そもそもそんなことを知らず、ただ競技に励んでいた」という言葉も聞きました。

大学生以上の選手と関わると、同じように「もっと早く知りたかった」という声をたくさん聞きます。その言葉を聞くたびに、正しい食事、栄養の知識を知る、触れる機会をたくさん作ってあげることが、周囲の大人の役割であると感じます(子どもの頃から実践できるかは別として)。

家庭内でも「きっかけ作り」を

昨年から流行する新型コロナの影響も受け、プロ競技の試合スケジュールは過密になり、若手選手にもチャンスがたくさん巡ってきています。ステージやカテゴリーが上がったとき、いつでもその舞台でパフォーマンスを発揮できるように「ジュニア期に食べる力を身につけること」は、他の選手との差別化にもつながります。ぜひ家庭の中で、好きな選手の取り組みを例に挙げたり、食や栄養の情報を話題に出したりして、「きっかけ作り」に取り組んでみてください。

今回紹介するレシピは、1人暮らしでも簡単にできる「 春キャベツと豚肉のミルフィーユ」。キャベツ豚肉を交互に鍋に敷いて蒸し焼きにする料理です。今が旬の春キャベツは葉が柔らかく甘みがあるので、サラダや蒸し料理がおすすめ。何よりも旬の食材は栄養が豊富です。

普段のキャベツとどんな違いがあるのか、どんな味付けにすると食材が生かされるか、そんな話題を出しながら食卓に並べてみてください。

また、キャベツに含まれるビタミンUは消化を助ける役割があり、豚肉に含まれるビタミンB1も疲労回復効果があります。忙しくて疲れている時にもお役立ちのメニューです。

KAGOSHIMA食×スポーツ/管理栄養士・田畑綾美