中高校生年代の女子選手の指導で最も気を遣うのは、明らかに体脂肪が多く、減らした方がよい選手に対しての言葉かけです。容姿に関する発言はハラスメントだという時勢ですので、専門職であってもためらわれます。

以前、ある産婦人科医から聞いた話です。

「ひとりの若い女性が診察に来た。彼女はかなりの肥満だった。彼女に『ここまで太ってしまったのはなぜかな。家族や周りから今まで何か言われたことはなかったの?』と聞くと、彼女は涙をぽろぽろと流しながら『私も気にしてはいた、でも家族は腫れ物に触るようにその話題はしなかった…友達からも何も言われなかったのでずっと先送りにしてきた…でも、わかっていた』と」

その先生は続けました。

「彼女はここまでの状態になる前であれば、運動もできた、でもここまでになったら運動も命にかかわるから簡単に体を動かす、というわけにいかないのです。もっと早い段階なら減量の方法もたくさんあったはずです…」

非常に考えさせられました。

容姿について、家族も何か言うことがない時代ではありますが、明らかに減量が必要な若者がいて、しかもスポーツをしているなら、声をかけるのが私の仕事だと感じました。

生活習慣による体脂肪過多の問題

日々運動しているアスリートは、そこまでの肥満度にはならないでしょうが、体脂肪が著しく多いための過体重の場合は、指導する必要があると思います。ケガ(外傷)をすれば重症化しやすく、しないまでも脚や膝、腰への負担も大きくなり、故障(障害)も起きやすくなります。

痩せすぎ、エネルギー不足等のいわゆるREDs(相対的エネルギー不足)はもちろん大きな問題ですが、一方でジュニア年代には、幼少から現在に至るまでの生活習慣からくる食事内容、食習慣や、ストレスを食べ物で解決するといった問題から体脂肪過多となって育ってきている選手もいます。

思春期の女子選手が自分の容姿を気にしないことはまずありません。「どうにかしなきゃ」と思ってもどうしたらいいかよくわからないのだと思います。ただ、幸いなことに日々競技の練習はあるので消費エネルギーは一般の女性より多く、常に運動もトレーニングもしています。

短期間に極端な減量ではなく、食生活の質と量を整え、少しずつ今の食生活を変えていけば、体への負担も少なく体は変わっていきます。

本人の決意と一番の成功のポイント

大切なことは「本人の気持ち」です。覚悟というとストイックな感じがしますが、「変わるんだ」と決めること。いきなり色々を変えるのではなく、できそうなことから始める。始めたら継続する、途中でやめないこと。そうして小さな成功を粘り強く積み重ねていくのです。その継続で必ず変わります。

具体的には朝起きて、排尿後の体重を毎日計り、記録します。まず現状を知ることが大切です。

毎日計ることで、昨日の食生活を振り返ることになりますし、月経の前などはむくみが来て体重が増えやすいことも分かるようになります。数値に一喜一憂するのではなく、数字の原因を考えるようにしていけば自分のコンディションを客観的に見られるようになります。

体重を減らす必要のある選手に、私は「じりじりと減らそう。それが一番の成功パターンだよ」と言います。

一番大切なことは、自分から「変わろう」と決意すること。習慣を変えるのですから時間は必要です。指導者と連携をとり、焦らず・急がず・怠らずに取り組ませたいと思っています。

今回は「サトイモと鶏ひき肉のそぼろ煮」を紹介します。

サトイモは9月くらいから千葉産や埼玉産が出回り始め、冬に向けて出荷が多くなります。糖質のほか、カリウムと食物繊維が多いという特徴があります。

サツマイモなどには不溶性食物繊維が多いですが、サトイモは腸内環境を整えるガラクタンやグルコマンナンなど水溶性食物繊維が多く、これらも便通を整えます。鶏ひき肉を使えばタンパク質はとりつつ、脂質を抑えることができますね。

体を変えることは習慣を変えることです。少しずつ今より動きやすくなる生活へ…1年後にはきっと大きく進化し、自信に満ちた笑顔が待っている、そんな姿をイメージしながらサポートしていこうと思います。

管理栄養士・月野和美砂