日頃、様々な競技や選手と接していると、競技によって「なりたいカラダ」の目標が違うことを実感します。ラグビーやサッカー、バスケットはどれも“当たり負けしない”というのがキーワードとなり、フィジカル強化のため増量します。野球もまたパワーをつけるため、増量をします。

増量したいならしっかり主食

カラダ作りを意識し出すのは、中学生や高校生になってからの選手が大半です。それまで食事量を意識せず、十分にとる生活をしてきていないと、「さあ、カラダ作りだ」と意識しだしても急には食べられず、大変な思いをすることになります。

しかも、最近の選手は、エネルギー源となる主食「ご飯=米」を食べなくなっています。思春期は、個人差はあっても身長が伸びる時期であり、その時はかなりのエネルギーを摂っていても体脂肪がつかない選手も多くいます。代謝が盛んなために、エネルギーを多くとっても体重が増えないのです。

選手には主食の重要性を理解させた上で、主食量を増やすようアドバイスしますが、主食を多くした分、逆におかずの量が減ってしまう場合も見受けられるので、時々食事画像を共有してもらい、確認しています。主食ばかりを食べさせるような食事指導はしないものの、必要な主食が全く取れていない選手も意外と多いため、定期的に把握しながら指導を繰り返しています。

ご飯の量を「親に量ってもらっている」

そんな中、コーチとの雑談から「選手の中には、自分で主食量を量っていない者もいるのでは?」と言われ、ハッとしました。まさか…と思ったものの、選手全体に問いかけてみると、ぽつりぽつりと「親に量ってもらっている…」という声が聞こえてきました。

主食量は誰が量っても構わないかと思われるかもしれません。しかし、選手自身がお茶碗にご飯をよそい、目で見てどのくらいの量かを把握することは、本人にとっての学習でもあり、自己管理としては必要なことです。できれば、スケールでグラム数も把握しておくのが理想です。「ご飯の量は自分で量るように」と指導しました。

足りない場合は脂質も効果的に利用

成長期で運動量も多い時など、かなりのエネルギー量が必要な場合、ご飯だけではとりきれないことも出てきます。1回の食事でたくさんの白米を食べるのが難しい選手もいるでしょう。

個人差はありますが、選手の体脂肪がかなり低い場合、増量の際は油脂も使うように指導します。糖質に比べ、脂質はエネルギーが1gあたり倍以上あるからです(糖質は1g=4kcal、脂質は1g=9kcal)。主菜や副菜で、炒め物やから揚げ、マヨネーズを使ったおかず、鶏肉は皮つき、魚は脂ののった魚などを普通に取り入れて良いと話しています。

「アスリートは高タンパク低脂肪」と保護者、選手ともインプットされていることも多いので、あえて油をとらない調理をしている方もいますが、選手の状況を見て、今がどのような状況でそのためにどのような食事が必要なのかを個々に説明することにしています。選手は自分のことを自分で知り、目的に対して今何をすべきかを理解しながらカラダ作りをすることが大切です。

今回は「サツマイモと鶏もも肉のハニーマスタード」を紹介します。

サツマイモで糖質、鶏もも肉でタンパク質、もも肉の脂質でエネルギーがとれ、カラダ作りに適したおかずです。主菜と野菜やイモ一緒になったおかずでバランスをとりつつ、糖質摂取のちょい足しもできます。

サツマイモは皮付きで使うのがポイントです。紫色と黄色のコントラストがきれいですし、表面の色のアントシアンが体内で発生する活性酸素を抑制、皮に含まれる食物繊維は不溶性、水溶性ともに腸の働きを支えてくれます。「おいしく食べてしっかり増量」をできるようにしていきたいですね。

管理栄養士・月野和美砂