先日、包丁を研ぎに出しました。受け取りの時、店の主人が「最近は親が料理をしなくなって、親が子どもに料理を教えなくなっているようだ」と話していました。

「かつてはスーパーの売り場でも料理のデモンストレーションを行っていたが、今はそんな店もほとんど見なくなった」とも言っていました。そう言われればここ数年、新型コロナの影響もあり、店内での試食販売もすっかり見かけなくなりました。

出来合いのものを購入するのは、急いでいるときはとても便利です。でも、便利というメリットと引き換えに、失っているものはかなりあるのではないでしょうか。金銭的なものはもちろんのこと、量や味の調整、苦手な食材が紛れ込む、ゴミが増える…それ以外にもあるはずです。

「料理をする」ことが偏食克服の1つに

よく子どもの偏食の相談を受けますが、直す方法の1つに「料理をする」ことがあります。料理といっても1から始めるのではなく、レタスをちょっと手でちぎる、トマトのヘタをとるということだけでもいいのです。食材に触れたり作ったりすることが、食べ物への興味を持つきっかけになります。

また、料理をするときの「香り」も偏食克服の1つです。ある人気の保育園や幼稚園では、昼食の調理中の香りをかいだ子どもたちが「今日のごはんは何?」と聞きに来るそうです。目の前に並んだ料理だけでなく、キッチンで何かを作っているという香りや気配からも、子どもたちは「今日のおかずは何?」「何を作っているんだろう」と興味を持つのです。

食への関心を広げて小食克服へ

子どもが思春期になって「お友だちは身長もぐんぐん伸びていて、ものすごい量のご飯を食べるのにうちの子は…」と子どもの小食に悩む声も聞きます。成長ピークの時期は個人差が大きいので焦ることはありませんが、小食の理由が食への関心が低いということだとしたら、様々な場面で食べることへの関心を地道に広げてあげたいですね

そのためにもまず、保護者自身が楽しくおいしく食べることが大切です。子どもの偏食や小食は保護者自身の食意識が影響していることもあります

食材に触れる、料理を盛り付ける、香りで想像力を働かせるなど、子どもの五感をフル回転させましょう。日々の食事を楽しみながら、長い目で食べることへ関心を広げていきましょう。

今回は「鶏もも肉とスナップエンドウのヨーグルトレモン焼き」を紹介します

4~6月に旬を迎えるスナップエンドウは、グリンピースを改良し、中の豆ができてもさやが硬くならないので丸ごと食べられるようになっています。筋をとり、下ゆですれば様々な料理に使えます。食物繊維、βカロテン、葉酸、ビタミンB1やB2、ビタミンCを含んでおり、肉料理に合わせると彩りも良いのでおすすめです。

高タンパクの鶏もも肉をヨーグルトに漬けておくと、乳酸によって筋原線維タンパク質がほぐされ、肉が柔らかくなります。レモンの香りもさわやかです。

初夏にぴったりの「鶏もも肉とスナップエンドウのヨーグルトレモン焼き」を子どもと一緒に作って食べてみましょう。食卓でも食材のことを話題にして、日頃から食への関心を高めていくと、いつの間にか偏食や小食を克服できているかもしれません。

管理栄養士・月野和美砂