普段、セミナーをしている中で、保護者からの相談で多いのは「子どもが野菜を食べない」というものです。中高校生選手の食事画像を見る機会もよくありますが、野菜はほんの飾り程度のミニトマトだけ、ということも少なくありません。

「野菜を食べよう」と伝えても「なぜ、人間が野菜を食べなければいけないのか」「体調をコントロールするって何?」と思っているのかもしれません。今回お話ししたいのは、「食物繊維」についてです。

肉を食べると便秘になりやすい

人間を含めた動物は食事を通じて必要な栄養素を吸収し、不要なものを便として排泄することが大切です。これができないと体調を崩したり、免疫力が低下したりします。しかし、肉を食べると便秘になりやすくなるのです。

肉はタンパク質が多く、ほとんどが腸で吸収されるため、便の量が少なくなります。消化の過程でアンモニア、硫化水素などの毒性物質も発生させますが、便の量が少なく体外に排出できないため、それらも腸内に残り、腸内環境を悪くしてしまいます。

ライオンなどの肉食動物は、草食動物を食べることで草に含まれる栄養分や食物繊維をとり、排便できますが、元々は植物食だった人間の腸は肉食動物よりもはるかに長く、体長の12倍もあるので簡単には便を排出できません。

消化吸収されない食物繊維、便のかさを増やす

そこで必要なのが、食物繊維です。食物繊維は体内で消化吸収されないため、便のかさが増えます。腸内の善玉菌のエサにもなり腸内環境が良くなります。それにより腸内を移動し、ある程度たまったところで便意をもよおすことになるのです。

このようなことから、ご飯やパンといった主食(糖質)や肉や魚などの主菜(タンパク質)だけでなく、食物繊維のとれる野菜や果物、キノコ、海藻などを普段から食べることが大切です。

保護者だけでなく選手も参加するセミナーでは、保護者にアドバイスすると共に、「選手自身で苦手な野菜も食べるよう努力しよう」とも言っています。保護者が一生懸命工夫して料理を用意しても、選手が食べようとしなければ意味がないからです。10代のうちは嗜好も変わります。保護者も選手も諦めずに、ぜひチャレンジしてほしいと思います。

今回は「タケノコとチンゲン菜と豚肉の炒め物」を紹介します。

タケノコは3~5月頃を中心に出回ります。一般的によく店頭で見かけるのは孟宗竹(モウソウチク)です。米ぬかなどを使って下処理をしますが、今はあく抜きもされたものがあり、旬の時期だと国産の水煮タケノコも手に入りやすいでしょう。今回のレシピでは、水煮タケノコを使っています。

タケノコは春を感じる食材で食物繊維が多く、チンゲン菜は緑黄色野菜なので食物繊維以外にもβカロテン、葉酸、ビタミンC、カルシウムなどがとれます。

野菜嫌いな子どもに少しでも食べさせる工夫としては、「細かくする」「混ぜ込む」のが王道です。また、ゆでたり、油で炒めてオイルコーティングしたりすることで、においや味の苦手をカバーしやすくなります。

子どもたちの好きな肉と合わせた炒め物で、少しずつ食べられる野菜を増やしていきましょう。

管理栄養士・月野和美砂