私が指導する中学生女子のバレーボールクラブは先日、新年度初の合宿を静岡県御殿場で行いました。集団生活となる合宿は、技術指導以外にも多くの体験ができ、食事もその1つです。

ビュッフェ形式の食事では、マナー、彩りよく料理をとる、残さず食べる、自分で下膳する、使用したテーブルを拭いて次の団体が気持ちよく使えるようにするなど、体験しながら学べることが多くあります。みんなでそろって「いただきます」のあいさつをするのも、合宿ならではのことです。

地産メニューの「黒はんぺん」

また、このチームでは食べ始める前に、食事係が「本日の献立」とメニューに使われた食材を簡単に説明することになっています。この日は「地産メニュー」として「黒はんぺん入りおでん風煮」があり、食事係は事前に調べた内容をみんなの前で話し、あいさつをしてから食事が始まりました。

ある選手の食事。写真左中央が「黒はんぺん入りおでん風煮」
ある選手の食事。写真左中央が「黒はんぺん入りおでん風煮」

黒はんぺんは静岡郷土料理であり、私たちの住む神奈川県ではあまり見かけません。選手たちは「黒はんぺん、どれどれ?」と探したり、周りから教えられたりして、初めて見る食材の味や食感を確かめていました。

周辺の散歩で触れたツクシや野草

合宿地周辺を散歩するだけでも、新たな発見があります。体育館への道すがら、ツクシやフキノトウが出ていました。以前は春になると道端で見かけた野草が、ここにはたくさん生えていました。

子どもたちに「ツクシを見たことない人?」と聞くと「図鑑でしか見たことがありません」という声も。「ツクシくらいは見て知っているだろう」と思っていたので、知らない子がいたのは驚きでした。そこで急きょ、ツクシやヨモギ、フキノトウなどの春の植物の「体験授業」を開催。「これが草餅を作るヨモギだよ」と教えると、摘んで匂いをかいで「くさい~」と笑う子どももいました。

「地産メニュー」としてその地域の食文化に触れたり、野に生えるツクシの実物を見たりしたことは、子どもたちにとって貴重な体験なのだと改めて感じた合宿でした。“失われた3年”を少しでも取り返せるよう、スポーツ活動を通じて子どもたちの五感にリアルに働きかけ、刺激し続けたいと思います。

今回は「新ゴボウと豚肉の炒め物」を紹介します。

春暖かくなると「新」とつく名前の食材が多く出回ります。2月から6月に出回る新ゴボウは、普通のゴボウと同じ品種ですが、収穫する時期が違います。新ゴボウは、ゴボウが成長しきる前に収穫するため、あくや土臭さが少なく、柔らかく食べやすいのが特徴です。食物繊維は多いので、便のかさを増して排便を促してくれるでしょう。

豚肉にはタンパク質やビタミンB1が多く含まれます。ビタミンB1は、ご飯などの糖質をエネルギーに変えるのに使われます。

このように、食材1つ1つの栄養的な特徴や旬は、毎日の食事ごとに興味をもって調べれば、段々と分かってきます。「新ゴボウと豚肉の炒め物」を食べながら、家族の食卓で旬の食材のことを話題にしてみませんか?

管理栄養士・月野和美砂