今年に入り、「黙食(もくしょく)」という言葉が話題になりました。新型コロナウイルスの感染が広がり、再び苦境に立たされた飲食店が、客に食事中の会話を控えるよう張り紙をしたのがきっかけです。

元々は仏教の教え、家庭のしつけに

「黙食」とは元来、日本の家庭でのしつけの一つでもあり、仏教の「黙食(もくじき)」という教えから来ているものです。

食べることは命をいただくこと。食べ物への敬意を込めて、また作ってくれた家族への感謝を込めて「いただきます」と言いますよね。黙って食べることは、“食べること”に集中することにつながります。素材を味わおうとすると、自然と会話が少なくなるのです。

小学校などでは食べることに集中させるために、給食の時に余計なおしゃべりをしないよう「黙食」を指導しているところもあります。賛否あるかとは思いますが、食べることに集中せず、遊んでしまうのを避けることが目的です。

多くのチームとの合宿でも「黙食」

私が指導しているバレーボールのクラブチームでも以前、黙食を行っていました。強豪と言われる高校と一緒に実業団などで合宿をすると、1つの食堂でチームごとに順番で食事をしなければなりません。早く食べ終えないと、後のチームがどんどん遅くなってしまうため、黙って早く食べるという指導をしていたのです。

チーム単独の合宿をするときも、そういった時のことを想定して「黙食」を練習していました。食事係の号令を受けて、全員で「いただきます!」と言った後は、誰一人話をすることなく食べていたことを思い出します。

仲間と談笑しながら食べるのは楽しいですし、コミュニケーションの一つとしての食は確かに大切ですが、時、場所、状況によってさまざまな食べ方があります。コロナ禍の外食における「黙食」も、今の時代の食事作法の一つのありかたとして、定着するかもしれませんね。

今回は「たっぷりネギとささみのおかずスープ」を紹介します。鶏ささみ、ネギ、ショウガはいずれも体を温める食材で、ささみは高タンパク低脂肪の典型的なお肉です。脂肪分が少なく、加熱が進むと硬くパサつきやすいので、片栗粉などをまぶしておきます。

木綿豆腐も加えているので、このおかずスープで動物性、植物性のタンパク質がとれます。まだ寒さが続く2月、このおかずスープを黙ってしっかり味わってみてください。春に向けて、体作りを地道に進めていきましょう。

管理栄養士・月野和美砂