私が栄養サポートをしている東海大静岡翔洋ラグビー部は、12月27日に開幕する全国高校ラグビー大会(花園)に2年ぶりに出場します。サポートを始めてから2年目、今回はどのようなことをしているのか、少し紹介していきます。

3カ月ごとに体組成を計測

ラグビーという競技性から、選手の大半は増量、特に除脂肪量の増量を目指しています。年間4回、体組成の計測を定期的に実施し、同時に簡易ヘモグロビン測定で貧血の傾向を見ています。

定期的に体組成と貧血の傾向をチェック
定期的に体組成と貧血の傾向をチェック

選手たちは、数値の変動に大変興味を示し、自分の体の変化にとても敏感です。3カ月ごとに計測していると、自分データの変化が目に見えてわかるため、大いにモチベーションにつながります。計測結果の理由について分析することで、その後に行う栄養指導を「自分ごと」として捉えることができるので、自分が実行できる具体的な行動変容をスムーズに促すことができるのです。

3カ月ごとに数値の変化を見ることで、体作りのモチベーションに繋がります
3カ月ごとに数値の変化を見ることで、体作りのモチベーションに繋がります

体組成計測をトレーナー主体で行っているチームは多くあると思いますが、その数値を選手本人が生かし切れていないことが多いと感じます。私は、選手が理想の体作りに近づくには、まず「自分ごと」として捉えることが大切だと考えているので、サポートする場合、体組成計測と栄養指導をセットで行っています。

「なりたい自分」のための内容と量

栄養指導については、その選手が必要としている食事例の弁当を作り、食べてもらいながら行うことがほとんどです。そうすることで、その献立や食事量が必要であるということを体感してもらいます。

フードモデルを使ってのシミュレーションは、毎回大盛り上がり
フードモデルを使ってのシミュレーションは、毎回大盛り上がり

自分の生活に落とし込んで考えることで、選手たちにはとても響きます
自分の生活に落とし込んで考えることで、選手たちにはとても響きます

食事提供が難しい場合は、弊社で所有するフードモデルを使って模擬献立作りをしてもらいます。栄養の知識を得ることはとても大切なこととして私が力を入れている部分で、実際に食事をしたり、自分の生活に落とし込んでシミュレーションをすると、選手たちにはとても響くようです(参考:何をどれだけ食べたらいいのか、増減のポイントと「カラダの見える化」)。

無理なく実践できる知恵を授ける

増量したい選手たちは元々、炭水化物、タンパク質、脂質の三大栄養素の摂取には積極的です。しかし、三大栄養素の代謝のために必要なビタミンやミネラル類への意識が希薄なため、その大切さや不足しがちな理由を根気よく説明していきます。

さらに、寮生活を送っているため、家族のサポートをなかなか受けられない選手も多くいます。そのような選手でも、増量のために無理なく実践できるように、100円ショップやコンビニでも買える乾燥野菜や冷凍野菜やの工夫など、高校生でもできる「買い方」「選び方」を具体的に説明します。選手の生活環境や経済状況は様々ですので、意識と知識の両方の大切さを伝え、「こうしなければならない」ではなく、「自分で実践できる方法」を伝えていきたいと思います。

真剣に話を聞く、東海大学付属静岡翔洋高校ラグビーの選手たち
真剣に話を聞く、東海大学付属静岡翔洋高校ラグビーの選手たち

サポートを継続していく中で、チーム全体としては大型化に成功しています。しかし、学年によって意識のばらつきはあり、1、2年生のときに食事指導を開始した3年生は体作りも順調ですが、1年生はまだまだです。先輩たちが取り組む姿を見て、刺激を受けている様子も見えるので、今後に期待したいと思います。

今回はカブの根と葉を使った副菜「カブと豚ひき肉のホットあんかけ」を紹介します。あんかけにすると冷めにくく喉越しもいいので、食欲がないときでも食べられます。

カブの旬は3~5月頃と10~12月頃。秋から冬のカブは甘みが強いのが特徴です。根もおいしいですが、葉の活用をおすすめします。

葉は緑黄色野菜で、βカロテンやビタミンC、骨を強くするカルシウムやビタミンK、貧血の予防に役立つ鉄や葉酸などの栄養が含まれています。特にカルシウムの含有量は、野菜の中でもトップレベルです。

ただ、葉はすぐに黄色くなるので、塩ゆでして冷凍保存するのがおすすめです。たっぷりのお湯に塩をひとつまみ加えて、1分前後ゆでましょう。

ゆで上がったら冷やして水けをきり、小分けにして冷凍しておくと便利です。みそ汁の具や煮物、炒め物にも使えます。私は細かく刻んで、チャーハンにたっぷり入れています。

静岡スポーツ栄養研究会/管理栄養士・中野ヤスコ