オフシーズンの冬は、多くの競技が「からだづくり」を目指す時期になります。新チームがスタートし、気持ち新たに目標を掲げているでしょう。多くの選手や指導者から聞かれるのが、「免疫力を高める、感染症を予防する食事」を知りたいということです。

様々な食品からバランスよくが大前提

「免疫力を高める、感染症を予防する食事」とは、どのようなものでしょうか。

私たちの身体は、数カ月かけて全体が入れ替わります。様々な身体の部位や内臓を作り替えるためには、エネルギーや栄養素が必要です。作り替えるための素材が不足すると、うまく作り変えることができなくなります。つまり、免疫力を高めることができず、感染症を予防できなくなり、様々な不調が現れます。

また感染症予防には、ほとんどすべてのビタミンやミネラルが必要になります。こういったことから結局、「自分に必要な量を様々な食品から、バランスよく食べること」ということになります。

私がサポートするアスリートたちには「3カ月前の食事から試合が始まっている」「今日の食事は、3カ月先の自分のために食べている」と伝え、細胞レベルで強くなる身体づくりを目指しています。これらを踏まえた上で、特に意識してほしい「免疫力を高める3つのポイント」を紹介します。

1、粘膜を強化しましょう

鼻やのどの粘膜を強くすることで、ウィルスの侵入を防ぎます。活性酸素から身体を守るためにも、抗酸化作用のある「ビタミンA」「ビタミンC」「ビタミンE」の豊富な食材をたっぷり摂りましょう。例えば、レバー、ウナギ、緑黄色野菜、イモ、シイタケ、果物、卵、緑茶などに多く含まれています。

2、腸のコンディションを整えましょう

腸の免疫細胞の活性化につながる納豆、みそ、ヨーグルトなどの発酵食品や、野菜、海藻、キノコ類などの食物繊維をしっかり摂りましょう。

3、身体を温めましょう

エネルギー不足は冷えのもとです。エネルギーになるものをしっかりと食べるということが大切です。特に、肉、魚、卵、大豆など良質なタンパク質をとることで、体温をグッと上げることができます。

また、脂質にも保温効果があります。「あぶらは身体によくないもの」と捉えている人も多いですが、大切なエネルギー源であり、細胞膜やホルモン、血管の材料になります。脂溶性ビタミンの吸収を助けるなど脂質は多くの役割を行っています。ショウガや唐辛子などの香辛料も、上手に取り入れていきましょう。

「この食品を食べていれば、この栄養素を摂れば感染症にかからない」「この食品を食べると免疫力がアップする」という魔法の食べ物は、残念ながらありません。特定の食品やサプリメントから、特定の栄養素をたくさん摂れば、その分、予防効果が高まるということもありません。先にも伝えましたが、「様々な食品から、自分に必要な量をバランスよく食べること」が感染症予防や免疫力アップにつながります。

どうしても、食事だけでは摂りきれない栄養素がある場合は、過剰摂取に気をつけて、専門家の助言を受けながら必要な場合のみサプリメントで補ってください。もちろん、食べ物だけではなく、休養・睡眠、そしてストレスを溜め込まず乗り切っていきましょう。

ファストフィッシュで食べる機会を増やす

今回は「トースターでできる白身魚のパン粉チーズ焼き」を紹介します。冷凍の骨取りカレイを使って、トースターで手軽に作れる一品です。

私は「静岡県水産振興審議会」の委員として、5期目を迎えました。「魚食離れ」と言われますが、その理由は魚が嫌いなわけでは決してありません。健康志向も相まって、近年はサバ缶などの魚の加工品や練り製品などの消費拡大が顕著です。

水産庁は魚の消費拡大に向け、冷凍魚などの調理の手間がかからない魚介類の加工食品を、手軽に食べられるハンバーガーなどの「ファストフード」にならい、「ファストフィッシュ」として普及させています。ファストフィッシュの考え方には賛否両論がありますが、魚を食べる機会を増やすため、上手に活用してもらえればと思います。

静岡スポーツ栄養研究会/管理栄養士・中野ヤスコ