私たちは「我が子が健やかに育ってほしい」「スポーツも勉強も精一杯やってほしい」と思うと、つい「栄養素」のことばかり気になります。もちろん、上手に利用していけば有益なことも多くありますが、野菜を食べなければ野菜ジュースを、食が細ければ栄養補助食品をなど、不安からか、新しい商品が出ると、つい手軽にその栄養素が摂取できそうなものに手が伸びてしまいます。

ジュニアアスリートの悩みは「背を伸ばしたい」「体を大きくしたい」など、どの競技でもある程度、似たようなものです。

幼いときは「まず受け入れる」習慣を

食材から栄養素を、自分の力で自分の体に取り入れるためには、幼いときからの食経験の幅の広さで大きく差が出ます。幼いときからいろいろな食材を、「まず受け入れる」習慣を身に付けることが大切です。

加えて、幼いときから様々な食材を少しずつ経験することで、味覚や胃腸を鍛えることができます。どんな食品も「受け入れる」ことができる選手は、さらに食の知識を得ることで、今自分に何が必要なのかを考えられる選手、自己管理ができる選手に育ちます。

親元を離れての生活や遠征が続いても、自分で必要な食材を選ぶことができる力があれば、ムラのない安定したパフォーマンスが発揮できるでしょう。そして、ケガの少ない、息の長い選手生活を送ることができるでしょう。

乳幼児期の味覚発達は「おいしさ」の形成

味には「甘味」「うま味」「塩味」「酸味」「苦味」「辛味」があるといわれます。これらは生きていくために(自分の体に入れていいものかどうかを判断するために)、それぞれ大切な信号の役割を担っています。

“本能のおいしさ”は「甘味」「うま味」と脂っぽい味。赤ちゃんは、お母さんのおなかにいる時から、舌にある味蕾(みらい)細胞が発達し、味覚の形成が進みます。「脂っぽい味」を好むのも、生きていくために必要なエネルギー源を本能で求めるからです。

また、お母さんが食べたものによっておっぱいの味が変わり、赤ちゃんが反応します。大人では想像できないくらいの敏感さです。その後、生後5カ月くらいから成長とともに、どんどん味覚が広がっていきます。この時期にいろいろな味や香り、食感を経験していくことが大切なのです。その“刷り込み”が、人生を豊かにする「おいしさ」の広がりになるといえます。

次のページ食経験が少ないと成長期で食改善が難しくなる傾向が…