私はかつて、女子実業団陸上チームが海外遠征する際の帯同業務を3年間行いました。遠征先は主にアメリカやスイスなど。大切な大会に向けて高地トレーニングを行うために3週間から1カ月半、選手たちと共に過ごしてトレーニング内容に合わせた食事提供や、新人選手への栄養指導、貧血対策や減量が必要な選手へのサポートなどをしていました。

女子選手は「食べる楽しみ」必要

アスリートの食事は栄養価も大切ですが、心にも大きく影響します。まず、食事の時間が楽しいものでなければなりません。特に女子選手は「食べる楽しみ」を重視したサポートが大切です。話題の食材を使用したり、選手の好物やリクエストを順番に出したり、誕生日や季節の行事などのイベントを盛り込んだり、盛り付けも小さくかわいく、カラフルにするよう工夫しました。

もちろん、男女で差をつけている訳ではありませんが、女子のトップアスリートは、幼い頃から競技を続けている選手がほとんど。思春期の心身の変化が、選手を苦しめることが多いのです。ジュニアアスリートは思春期真っただ中のことが多く、保護者の皆さまも一筋縄にはいかず悩まれていることでしょう。

男子選手の課題は、増量や筋力アップなどカラダを大きくすることが多い一方、女子選手は、審美系(新体操や体操、フィギュアスケートなど)や陸上長距離など、カラダが軽い方が有利とされる競技での悩みが多いのが現状で、「女性アスリートの三主徴」が問題になっています。

「食べてはいけない」刷り込み

女性アスリートの三主徴」では、摂食障害の有無に関わらず、利用できるエネルギーの不足が視床下部性無月経や骨粗しょう症を引き起こすと警鐘を鳴らしています。体重を気にしている女子選手は、そのような知識を頭で理解していても、長年の「食べてはいけない」という刷り込みによって、行動に移すことが難しいのです。

男子選手は、数値などを「見える化」し、正しい知識と励ましで、モチベーションアップをはかることができる選手が多いのですが、女子選手の場合は、知識を伝えた上で、安心感を示すために「見える化」するのが有効です。

具体的にいうと、以下のような手順です。

必要なエネルギー量を摂れていないことを示す。
 
その弊害について伝える。
 
ただ、急に食べる量を増やすことで「太ってしまうのでは」と不安がり、また、小食だった選手がドカ食いしてしまうこともある。
 
まず、ご飯を1口だけ増やしてみよう。体重や体脂肪を量って、増えていないことを確認しながら7~10日間実施。
 
安心させながら、1口ずつ時間をかけて食事量を増やしていく。

体調不良や冷え性、肌荒れや抜け毛などがあった選手が体調アップを感じたらしめたもの。心の問題が大きく関わっています。

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