<イップスって何?(37)>

最後に1人の青年を紹介します。谷口智哉さん(24)。彼は外野手だった慶応高時代にイップスに陥りました。3年夏はベンチ外で終えました。慶大進学後も野球部に入り努力を重ねましたが、試合出場機会は得られませんでした。

しかし、悪戦苦闘する中で光を見いだし、最後は思い通りのスローイングができるようになりました。イップス克服は、彼の大きな自信になったといいます。

今年4月から大手損保会社への入社が内定していましたが、卒業までの間と思ってイップス克服の指導を始めると将来に迷いが生じました。「人生をかけてやりたいことはこれだと思いました。高校、大学と試合に出場できませんでしたが、イップスを克服して納得して野球を終えられた。その方法や考え方を伝えていきたい。そう思って内定をお断りしました。会社には本当にご迷惑をかけてしまいました。両親にも大反対されましたが、今では応援してくれています」。

現在は「イップス研究家」と名乗り、YouTubeやSNSで情報を発信し、「Line@」を使って個別相談も行っています。イップスを克服した自信が、彼の人生を変えました。まだスタートしたばかり。イップスに挑む道は険しいですが、健闘を期待しています。【飯島智則】