いまや「チア」は人気の習い事として、子どもだけでなくシニア世代にまで広がっています。私は現在、チアダンス講師として様々な年代の方にレッスンしていますが、どのレッスンもいつもたくさんの笑顔があふれています。

「孫がチアをしています」と体験レッスンに来られた70代の女性は最初、「見学だけ」と言って後ろの方で座っていましたが、最後には汗をかくほど体を動かし、「楽しいわ」と笑っていました。「家族に内緒」とこっそりレッスンに来ていた方も、今では家でポンポンを持って練習をしているといいます。かわいらしい衣装とポンポン。これはどの年代の女性にも憧れのようで、「キラキラのポンポンを持って踊るとテンションが上がる」という声も聞きます。

ポンポンを手に持って笑顔でポーズを決めるキッズチアリーダー(提供=一般社団法人チアファミリー)
ポンポンを手に持って笑顔でポーズを決めるキッズチアリーダー(提供=一般社団法人チアファミリー)

九州大学大学院でチアが心身に与える影響を研究

やり始めると、多くの方が夢中になるチアダンス。その理由は何なのでしょう。

長年携わっている私自身も、その魅力について学術的な説明をできかねていましたが、チアが心身に与える影響についてとても興味深い研究がありました。九州大学大学院で太刀山美樹さん(MIKI・ファニット代表/日本健康指導士会・福岡県理事)が発表した「チアダンスをベースにした、発散型運動プログラムにおける脳疲労とストレス改善」です。令和2年度スポーツ庁「Sports in Life 推進プロジェクト」の一環として行われ、令和4年(2022年)8月に日本体育スポーツ健康学会で発表されました。

そこで今回から3回にわたり、その研究報告から見えたチアダンスの魅力をお伝えしていきます。

脳疲労の軽減、不眠改善、ネガティブな感情が抑制

研究によると、20代から40代でスポーツ実施率が低く、ストレスが多いであろう医療福祉従事者の女性を対象に、チアダンスをベースにした運動プログラムを実施したところ、脳疲労の軽減、不眠改善、ネガティブな感情が抑制されました。それだけでなく、躍動感や活力などポジティブな感情が向上することがわかりました。また、週2回程度の定期的なレッスンに参加することで、脳疲労やストレスを改善する可能性も示唆されたといいます。

一概に「チアダンス」といっても、難易度の高い技やシンクロ性が求められる「競技チア」があったり、スタジアムやフィールドで選手を応援し、会場を盛り上げる「応援チア」があったりと様々なスタイルがあります。「チア(Cheer)」ですので、一般的には他人を応援するものと思われがちですが、踊る側のチアリーダーにもたくさんのメリットをもたらすという研究結果を知り、私は驚くとともに非常にうれしく思いました。

チアダンスの何がこのようなメリットを生むのでしょうか。それについては、次回のコラムで紹介していきます。

今回のレシピは「チアアップ☆アジのチーズパン粉焼き」です。アジなどの青魚に含まれるDHAも脳の働きを良くして、記憶力や集中力アップに役立ちますよ。アジの代わりに、サケやタラ、イワシなどでも代用できます。

※本研究の指標
脳疲労診断16ケ条・内田クレペリン検査・POMS2・アテネ不眠尺度・臨床検査・特殊検査

※研究協力チームメンバー
株式会社MIKI・ファニット
(協力)九州大学医学部・藤野武彦名誉教授、一般社団法人プラズマローゲン研究会、下関市立大学経済学部・松﨑研究室、社会医療法人栄光会、CROSSHEART、村井工機

元NFLチアリーダー・松崎美奈子