<栄養素を無駄なく摂る食べ方:果物編>

柿は中国原産と言われるカキノキ科の果実です。日本では奈良時代には栽培されていたようです。

甘柿と渋柿がありますが、甘柿は渋柿の変異で、1000種ほどある柿の中で約20種ほどです。どちらにも渋味成分は含まれていますが、渋味成分が不溶性だと甘く、可溶性だと渋く感じます。実の中にある「ゴマ」と呼ばれる黒い斑点は、渋味成分が固まったものです。

渋柿はそのままでは食べられないため、アルコールや炭酸ガスなどで渋味成分を不溶性に変える「渋抜き」をしてから市場に出回ります。また、干し柿にすることでも渋みは抜けます。

表面に白い粉(ブルーム)が付いていることもありますが、ブルームには水分の蒸発を防ぐなどの働きがあります。品種によってお尻に黒い筋が出ることがありますが、熟すと見られる条紋と言うもので、ともに心配はありません。

主な栄養素と無駄なく摂るコツ
柿はβカロテン、βクリプトキサンチン、ビタミンC、食物繊維などが豊富に含まれています。糖はブドウ糖と果糖が多く、吸収されやすいので、運動前後の栄養補給におすすめです。

渋味や色素はファイトケミカル(フィトケミカル)で、強い抗酸化作用があります。古くから「柿が赤くなると医者が青くなる」と言われますが、葉を柿葉(かきよう)、ヘタは柿蒂(してい)、干し柿を柿餅(しへい)、干し柿の表面に出る白い粉を柿霜(しそう)、根を柿根(しこん)、柿渋を柿漆(ししつ)と言い、生薬としても使われています。

アルコールを分解する酵素のカタラーゼと、それの排出を助ける成分のシブオール(タンニンの一種)が含まれるため、二日酔いの予防になります。一方でタンニンは鉄の吸収を妨げます。また、体を冷やす成分も含み、食物繊維が多く消化はあまり良くないため、貧血気味や冷え性、お腹をこわしやすい人は食べ過ぎに注意してください。

果皮や果皮の周辺に栄養素が多く含まれているので、果皮ごと食べた方が無駄なく摂取できます。生で食べにくい場合は、薄く切って天ぷらなどにすると無理なく食べられ、脂溶性栄養素の吸収率が上がります。

柿の葉はビタミンCやビタミンK、ミネラルが豊富で、ポリフェノールのフラボノイド類を含んでいます。血管強化、止血、利尿などの効果があるとされ、薬としては鎮咳、止血、喀血、消化性潰瘍、血小板減少症などに適応されます。民間療法では血圧降下を期待して飲まれています。防腐作用があるため、押し寿司にも使われます。

柿の葉寿司
柿の葉寿司

期待される健康効果は、風邪予防、美肌効果、疲労回復、生活習慣病予防、ガン予防、二日酔い改善、骨粗しょう症予防、便秘改善などです。

保存するなら
柿はヘタを下にして保存します。ヘタを下にすることによって呼吸が抑えられ、劣化が遅くなります。

シャキシャキした食感が好みの場合は、ヘタに湿らせたキッチンペーパーなどを当ててからポリ袋に入れ、野菜室で保存します。ペーパーが乾かないようにしておけば、2週間はシャキシャキ感が保てます。

やわらかくしたい場合は常温に置きます。リンゴと一緒にポリ袋に入れると早くやわらかくなります。やわらかくなった柿は日持ちしないので、早めに食べましょう。

冷凍する場合はやわらかいものの方が向いています。食べやすい大きさに切ってから保存袋に入れて冷凍します。ジュクジュクに熟した柿は、丸ごと冷凍するとシャーベットのように食べられます。ピューレにして密閉袋で薄い板状にするか、製氷皿で凍らせても使いやすいです。

ペクチンが含まれているためジャムにもできますが、ゲル化に必要な酸が少ないため、レモン汁などを加えて作りましょう。また、「渋戻り」と言って生食では感じなかった渋味が、加熱によって再び感じるようになることがあります。渋味成分はタンパク質と結合しやすいため、ジャムをヨーグルトやクリームチーズと合わせたり、牛乳や生クリームを使ったお菓子作りに利用するとおいしくいただけます。

【管理栄養士・高木小雪】