大豆の味を楽しみたいなら「常温」で

老若男女に親しみがある豆腐ですが、“専門家”ならではの味わい方があるのではないか。そう思い、植田部長にオススメの食べ方を尋ねました。すると「冷ややっこ」という言葉が意外に思える答えが返ってきました。

「冷えた方が好きな人は多いと思いますが、私たち豆腐の業界では冷蔵庫から出して1、2時間立ち、常温と呼ばれる状態にします。そうして食べると一番、お豆腐の味が分かります。もし豆腐そのものの味を楽しみたいなと思ったら、常温まで戻していただくと、大豆の風味がより味わえると思います」

特に、賞味期限が長い箱とうふは、お助け食材にもなり得ます。

「例えば耐熱皿で、とろけるチーズをかけてレンジでチンすると、チーズ豆腐のようになります。麺つゆやオリーブオイルなどをかけると、いいおつまみになります。ホワイトソースをつくるのが面倒に思ったら、グラタンの上にくしゃくしゃにつぶした豆腐をかけて、チーズもまぶしてオーブンで焼くと、グラタンっぽくなるんです」

ほかにも災害時を想定したオススメの「箱とうふレシピ」を次ページで紹介しています。

タンパク質は産地で差、カロリー量も鍵

アスリートに薦める食事は、絹ごし豆腐よりも、木綿豆腐を使った料理が多くなります。

「大豆の使用量は一般的に、木綿豆腐の方が絹の豆腐よりも2割以上多くなります。成分表示でカロリーが記載されていると思いますが、木綿豆腐の方が高いはずです。タンパク質も、大豆の使用量が多いので、木綿豆腐の方が多くなります」

選手が豆腐を摂取する際、重要視するポイントはタンパク質になるでしょうか。そうなると木綿豆腐の方が…となりますが、植田部長が面白いことを教えてくれました。

「タンパク質は、使う大豆によって結構、差があります。品種にもよるので一概には言えませんが、北海道産と九州産の大豆を比べた場合、九州産の方がタンパク質が高い傾向にあります。野菜と一緒で、寒い地域は糖度が高くなるので甘い大豆になりますが、その分、タンパク質が落ちます。温暖な地域の大豆は糖度は低いですが、タンパク質が高い。品種や育つ土地柄の影響もあるんです」

大豆の産地まで記載している豆腐はあまりないかもしれません。それでも、国産か海外産かは必ず表記されています。今、国産大豆と海外産大豆にそれほど違いはないそうです。

「昔は差があったようですが、今は海外産でも良い品質になっています。国産の方がちょっと甘みがあるかなという印象ですが、栄養素に関してはほとんど変わりません」

豆腐の大事な成分である豆乳は、大豆をすりつぶして作りますが、水をどのくらい加えるかで「豆乳濃度」が変わってきます。通常は表示されていませんが、公表している商品もあるそうです。豆乳の濃度が高い方が、より栄養価が高いことは確かです。そして、大豆の使用量がそのままカロリーにも跳ね返ってきます。豆腐を見比べる際は、カロリー表記を見ることも1つの参考になりそうです。

「さっぱり食べたいなら、水分値が多いのでカロリーが低いものを。大豆の味を楽しみたいなら、カロリーが高いものを選んでいただければいいと思います」

江戸時代中期から食卓に広がった豆腐

日本で初めて豆腐が作られたのは、奈良・平安時代という話があります。当初は特別なごちそう品で、江戸時代の中期から庶民の食べ物として広がっていったそうです。

今回の「箱とうふ」の世界。私たちが抱いている豆腐のイメージとは、少し違ったものだったのではないでしょうか。

多少脱線もしましたが、次ページでは災害時も想定した超簡単なオススメ「箱とうふレシピ」をご紹介します。

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