<栄養素を無駄なく摂る食べ方:果物編>

桃は中国原産と言われるバラ科の落葉樹で、3000年以上前から栽培されていたと言われています。日本では縄文時代の遺跡から桃核が出土しており、古くから食べられていたことが分かります。モモは「毛毛」が語源とも言われ、原種は実がかたく、たくさんの毛でおおわれていたようです。

現在流通している甘さの強い水蜜桃は、明治になってから本格的に栽培が始まりました。大きく分けると果肉の色で「白桃」と「黄桃」に分けられます。出回る品種の系統は、白桃の「白鳳系」と「白桃系」、黄桃の「黄金桃系」の3つです。

白鳳は白桃の代表格ともいえる品種で、多くの品種の親となっています。白鳳系は柔らかくて酸味が少なく、果汁がたっぷりです。

清水白桃
清水白桃

白鳳以外の白桃は程よい硬さがあり食感が楽しめます。果皮は赤色系と白色系があります。

黄桃は熟しても果肉がしっかりして甘味が強くないため、缶詰に加工されてきました。現在は品種改良により甘み、ジューシーさがアップし、生食用の黄金桃が出回るようになりました。

黄金桃
黄金桃

桃は追熟するため完熟前に収穫され、食べ頃に店頭に並びます。熟した桃は傷みやすいので、早く食べましょう。

形が左右対称でふっくらとし、きれいな丸みがあるもの、縫合線は浅いものの方が良品とされています。果皮の色がきれいで、しっとりとしてハリがあり、全体に産毛が生えているものを選びましょう。

果皮の色は品種によって赤、白、黄色があります。黒っぽくなったものは過熟または傷んでいることがあり、軸周辺の果皮が緑色のものは未熟です。果皮の色が濃い部分に出る斑点は果点と言い、甘味が強いと言われます。

桃は枝側よりもお尻(果頂部)の方が甘いです。切るときは縦にくし形に切ると均等に甘さが楽しめます。

主な栄養素と無駄なく摂るコツ
桃は水溶性食物繊維とナイアシンを多く含んでいます。食物繊維はペクチンが多く、整腸作用があります。ナイアシンはエネルギー産生を始め様々な代謝の補酵素となります。

桃には砂糖よりも甘みを強く感じる果糖が多く含まれています。吸収されやすい糖で、速やかにエネルギーに変わります。疲労回復を早める効果があるので、運動前にも運動後にも向いています。水分が多いため、熱中症予防にもなります。

皮をむいて放置すると、褐変します。これはポリフェノールによるものです。レモン水につけると褐変は抑えられますが、栄養素が流れ出てしまいます。食べる直前に切るようにしましょう。

緑茶に多く含まれることで知られるカテキン類が桃にも含まれています。皮の周辺は甘味が強いですが、苦味、渋味を感じることもあるかと思います。その苦味、渋味がカテキンです。カテキンはポリフェノールの一種で抗酸化作用があります。皮ごと食べると無駄なく摂取できます。果肉がかためのものは、皮が口に残らないのでおすすめです。

桃は生薬としても使われます。種子は「桃仁(とうにん)」、葉は「桃葉(とうよう)」、花やつぼみは「白桃花(はくとうか)」という生薬名です。桃仁は婦人科系の漢方処方製剤の成分になっています。桃葉は去痰、利尿、緩下、鎮静などの効果や、浴湯料としてあせもや湿疹、かぶれなどにも用います。白桃花は、便秘薬になります。

ビワと同様に未熟な果実や種子、葉にアミグダリンという青酸配糖体が含まれています。この成分は分解されると青酸(シアン化水素)となり有害です。直ちに健康被害が出るほどの含有量ではありませんが、種子を割って中の核を食べるのはやめましょう。生の葉を浴槽に入れるのも避けた方が無難です。

期待される健康効果は、便秘改善、美容効果、生活習慣病予防、冷え性、ガン予防、アンチエイジングなどです。

保存するなら
桃は柔らかく、とてもデリケートです。取り扱いに注意しましょう。冷蔵庫で保存すると甘味が抜けていくので、直射日光の当たらない風通しの良い冷暗所で保存します。良い香りがしたら食べ頃です。早めに食べましょう。

冷凍する場合は、優しく洗い、丸ごとぴっちりラップに包んでから保存用袋に入れて冷凍します。半解凍で利用しますが、凍ったまま流水に当てると皮がつるんとむけます。

食べきれない場合はコンポートがおすすめです。

【管理栄養士・高木小雪】