<栄養素を無駄なく摂る食べ方:野菜編>

トウモロコシはメキシコから中南米が原産と言われるイネ科の一年草です。米、麦と並ぶ主要な穀物の一つで、主食としている国が多くあります。紀元前2000年より前には栽培されていたそうで、マヤ文明やインカ帝国でも食べられていました。日本へは1579年にポルトガルから伝わりました。

青果で出回るのは「甘味種」。手前がゴールデン(イエロー)系、奥がシルバー(ホワイト)系
青果で出回るのは「甘味種」。手前がゴールデン(イエロー)系、奥がシルバー(ホワイト)系

トウモロコシは黄、白、赤、紫、黒など様々な色があります。種類は粒の性状によって、「馬歯種」「硬粒種」「軟粒種」「爆裂種」「甘味種」「糯(もち)種」の6種類に分けられます。

一般的にトウモロコシとして青果で出回るものは、糖度が高い「甘味種(スイート種)」です。日本へは明治時代にアメリカから入ってきました。品種改良が進み、より甘くなり、生でも食べられるものが出てきました。

昭和40年代から、スーパースイート品種のゴールデン(イエロー)系である「ハニーバンタム」が全国で栽培されるようになりました。甘味が強く、スープやコロッケなどどんな料理にも向きます。

シルバー(ホワイト)系は小粒で皮がやわらかく、サラダに向いています。「ピュアホワイト」など新鮮なものは生食もできます。

バイカラー系は黄色い粒に白い粒が3対1の割合で混ざる「ピーターコーン」や、黄色い粒に茶色、茶紫の粒が混ざる「ウッディコーン」があります。

バイカラー系
バイカラー系

ヤングコーンは品種ではなく、生食用甘味種の摘果された未熟果です。

ヤングコーン
ヤングコーン

皮の色が緑色のものが新鮮です。収穫から時間が経つと皮が色あせていきます。

ヒゲのように見えるものは花柱(めしべ)が長く伸びたもので、「絹糸(けんし)」と呼ばれます。完熟すると絹糸が茶色くなります。花柱と粒の数は一致するので、ふさふさしているものほど粒が多いです。絹糸は時間が経つにつれ乾燥するため、しっとりしているものが新鮮です。

皮がむかれている場合は、粒にツヤがあり、ふっくらとして大きさが揃い、ぎっしりと詰まって整列しているものが良品です。軸の切り口がみずみずしく、重みを感じるものを選びましょう。軽いものは粒がしっかり膨らんでいない可能性があります。

主な栄養素と無駄なく摂るコツ
炭水化物、ビタミンB群、カリウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン、食物繊維などを多く含んでいます。また、アミノ酸の中ではアスパラギン酸が多く、粒の根元の胚芽部分には不飽和脂肪酸のリノール酸が含まれています。

ビタミンB群はエネルギー代謝の補酵素となります。ミネラルは骨や歯など硬組織の構成成分や、生体機能の調節に関わります。アスパラギン酸は解毒や疲労回復作用があり、脳の神経伝達物質でもあります。リノール酸は血中コレステロールを下げる作用があります。

野菜の中では炭水化物が多く、ビタミンB群も含むため、効率の良いエネルギー源になります。調理する時に包丁で切ると、切り口から栄養素が流れ出てしまいます。切らずに加熱した方が損失は少なくて済みます。

絹糸は「ひげ茶」というお茶としても飲まれていますが、「南蛮毛(なんばんもう)」という生薬としても使われています。利尿作用があり、腎機能の改善、肝炎、胆のう炎、糖尿病、妊娠時のむくみなどに使われます。また、便通をよくする効果もあります。

トウモロコシは気温の低い早朝、うす暗いうちから収穫し始めます。気温が上昇すると糖が結合してでんぷんになり、甘味は感じなくなっていきます。「鍋を火にかけてから採りに行け」と言われるくらい鮮度が落ちるのがとても速く、収穫して24時間でおいしさが半減するとも言われています。出荷前に真空予冷で糖度が下がらないようにしているものが多いですが、成分変化が激しいので早く食べましょう。

粒を包む表皮は食物繊維が豊富ですが、消化が悪いので食べ過ぎるとお腹を壊すことがあります。また、実を取り除いた後の軸からもうま味が出ます。炊き込みご飯やスープなどには、軸も加えるとよいでしょう。

期待される健康効果は、疲労回復、骨粗鬆症予防、生活習慣病予防、便秘改善などです。

保存するなら
買ってきたらなるべく早く加熱し、水分が抜けないよう熱いうちにラップで包み、冷蔵庫で保存します。ラップで包んで電子レンジで加熱すると、そのまま保存できて便利です。加熱時間は機種によりますが、目安は500Wで3分、上下を返してさらに2~3分です。冷蔵保存は5日くらいが目安です。

冷凍する場合は、加熱後に実を外し、保存用袋に入れて冷凍します。カチカチに凍る前にほぐしておくと、使う時に便利です。2~3カ月ほどで使いましょう。

【管理栄養士・高木小雪】