<キッチンは実験室(46・上):電子レンジの科学>

皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。今回は、電子レンジを使った調理の科学に着目します。電子レンジの使い方のコツを知ると、料理の下ごしらえや温めが失敗なく、簡単にできるようになりますよ。

どうしてレンジは早く温められるか

さて、温めて食べる肉まんを買ってきました。家で調理する場合、方法が2つあります。蒸し器を使うと、沸騰させて肉まんを入れて、出来上がるまで10~20分かかります。一方の電子レンジを使うと、肉まんに1個ずつラップをかけて約1分半温めれば、ほっかほっかに仕上がるのです。

なぜ、電子レンジだと早く、簡単に温められるのでしょうか。それは、熱の伝わり方に違いがあるのです。

ガスコンロで鍋を使って蒸す場合、熱は鍋→水→食材の表面→食材の中心の順で伝わります。対して電子レンジの場合は、電波のエネルギーが直接、食材に吸収され、温度が上がるので、一気に温めることができるのです。

オーブンとも加熱方法が異なる

現在は、電子レンジにオーブン機能がついた多機能な「オーブンレンジ」が出回っています。電子レンジとオーブンでも加熱方法が違うので、仕様書に従って使う必要がありますが、大きな違いとして、こんなことを感じたことはないでしょうか。例えば、オーブンを使った後に扉を開けると庫内は熱風で熱いのに、レンジを使った後は加熱直後でも庫内が熱くない。

「加熱」には水や油、水蒸気の中を熱が伝わる伝導伝熱、対流によって伝わる対流伝熱、赤外線などの熱エネルギーが食品に吸収される放射熱と分類されますが、電子レンジでの加熱はこれらではなく、電磁波(マイクロ波)が食材に吸収され、食材に含まれる水を分子レベルで振動させて発熱させる仕組みとなっています。この電波のエネルギーは食材の表面だけでなく、むしろ内部から浸透していきます。

コンビニレンジがあっという間の理由

電子レンジの電波(熱)は、電気の通りやすさ、通りにくさとも関係があります。何を何分温めるのかは、電子レンジの出力ワット(600W、300Wなど)と、食べ物固有の値(成分や温度)の掛け算によって違いがあります。もちろん、メーカーの機能によっても変わってきます。

コンビニなどにある業務用の電子レンジは1500Wで20~30秒程度でお弁当を温められます。家で温めると600Wで数分かかるほどの違いです。電子レンジの出力と食べ物の成分や量の掛け算によって加熱時間が変わるため、ワット数の強さに応じて時間を調節すると、自由に加熱加減を調整できるようになります。

レンジの温め時間の計算式

自宅の電子レンジは500Wなのに、レシピは600Wというケースに悩んでいる方は、次のような計算式を参考にしてください。

「600Wを基準とし、500Wは1.2倍、700Wは0.8倍」

これをもとに具体的に計算するとこのような値が目安として出てきます。

600Wで1分=500Wでは1分10秒、700Wでは50秒
600Wで2分=500Wでは2分20秒、700Wでは1分40秒

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