唾液とうま味の関係

「よく噛んで食べよう」と言われる理由の1つに、唾液の効果があります。お米をよく噛んで食べると、口の中で甘味が出てきますが、このように唾液とうま味には密接な関係があります。

実は、唾液にはグルタミン酸が0.0015%(グルタミン酸ナトリウム換算)含まれており、これはイノシン酸のうま味を高めることができる量です。咀嚼(そしゃく)による唾液でうま味が高まり、またさらに咀嚼が促されるという相乗効果が生じるのです。

アメリカで行われた研究で、食品評価の専門家によるグルタミン酸のうま味を端的に表した言葉は「amplitude(アンプリチュード)」。1つ1つの要素に分けられない、たくさんの成分が融和して構成される風味のバランスと広がりを指す意味だそうです。日本語で言うとしたら、持続性、コク、広がり、まろやかさ、濃厚感を同時に満たしてくれるものでしょうか。その穏やかな味によって、食べる行為を促してくれるおいしさのことだと思います。

「おいしさ」の分類と感じ方

その「おいしさ」にも様々な意味やとらえ方があり、以下のように分けられます。

(1)体が必要なモノとしてのおいしさ

いわゆる味覚による「生理的なおいしさ」で、体が求める栄養素の味をおいしいと感じる、生物の基本的な能力です。

(2)刷り込まれた味のおいしさ

2つ目は「文化的なおいしさ」。小さい頃から食べ慣れた味をおいしいと感じるもので、いわゆる「おふくろの味」。

(3)目や耳から得た情報によるおいしさ

例えば、苦いコーヒー、ピリッとしたワサビ、高級なワインや流行の味など、「こういうのがおいしい」と学ぶことで覚える後天的なおいしさの感覚です。知識優先となると、食わず嫌いになる場合もあります。

(4)やめられないおいしさ

4つ目が脳の報酬や快楽によるものです。脂味と甘みが合わさったものは「やみつき食材」とも呼ばれ、βエンドルフィンという脳内ホルモンが分泌して幸せな気分になります。この脳の快楽のメカニズムについては、「うま味の科学(下)」でもう少し詳しくお話ししていきます。