<キッチンは実験室(37・下):揚げ物の科学>

唐揚げを作るのに片栗粉を使うか、小麦粉を使うか、好みが分かれると思います。片栗粉の多くはジャガイモを素材とし、でんぷんの粉なのに対して、小麦粉にはでんぷんとタンパク質(グルテン)が含まれています。グルテンはパンやうどんのコシを出すのに使われる弾力のあるものでしたね。

揚げ物を作るため、下味をつけた肉や魚に粉をまぶすと、調味液から出てくる水分を粉が吸います。片栗粉の場合はでんぷんを吸います。そのでんぷんが糊化(α化)されて緩い網目構造となり、水分が抜けて、さっくりと軽い柔らかな口当たりのものができます。竜田揚げのように片栗粉をしっかり多めにつけるとザクッとした食感にもなります。

一方、小麦粉の場合はタンパク質が水を吸うことでグルテンが形成され、熱で凝固し、頑丈な網目構造を保ったまま固まります。そのため中身はフワッとしているのに、衣はカリッとした歯応えのある食感になるのです。

この違いは、揚げてから時間が立ち、冷めた後にも表れます。片栗粉で揚げたものはでんぷんが水を吸うために比較的早くベタついてきますが、小麦粉の方はタンパク質が水を吸わないため、そこまでベタつかないのです。

ちなみに余談です。片栗粉をつけて揚げたものを「竜田揚げ」と呼ぶことがあります。これは紅葉が映えることで有名な京都の竜田川にちなんだもの。みりんやしょうゆで漬け置きした鶏肉を、たっぷりの片栗粉をまぶして揚げたものが、調味液のおかげで紅葉に近い赤褐色の揚げ物になったという説からです(※諸説あります)。

フリッターの衣に重曹を入れると

同じ揚げ物でもフリッターの衣は、卵黄、水分、小麦粉に泡立てた卵白や油脂などを入れて、ふわっとさせます。泡立てた卵白中の空気の泡は揚げている間に熱で膨張するので、衣は膨らんでスポンジ状になり、フワフワとした軽い食感になるのです。この時に重曹やビールを加えると、卵白の空気の泡以外に炭酸ガスの泡が発生するので、衣が一層膨らみます。

泡の分だけ隙間の多くなった衣からは、水分が抜けて、そこに油が入り込むことでサクッと軽い状態に仕上がります。ビールを入れると、小麦粉の白いフラボノイド色素はビールの酸性で白色に、重曹を入れると、重曹のアルカリ性でより黄色っぽくなるのです。

油をすくいかけて焼く理由

鶏1匹を丸ごと、また大きな魚を1匹揚げる時に油をかけながら焼く調理法があるのをご存知ですか? 油の入った鍋に入れるのと、何が違うのでしょうか?

たっぷりの油に食品を入れると、表面温度は急速に上昇するのに対し、内部はなかなか上昇しません。すると、表面が焦げているのに中身が生という失敗が起こりやすくなります。

表面に油をすくいかけながら焼く方法では、高温の油が流れ落ちた瞬間に温度が下がります。表面温度が下がっても、内部には熱くなった表面から熱が伝わり続けているため、内部の温度が徐々に高くなります。表面と内部の温度差が小さくなることで、生焼けを防ぎ、表面の焼き色の濃さも調節することができるのです。

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