誰よりも速く、助けを求める人のもとへ

ライフセービング競技にも、他のスポーツと同じように勝敗や順位があります。ただ他のスポーツと大きく異なるのは、「ゴールの先に救うべき命がある」という部分かもしれません。

誰よりも速くゴールした競技者は、誰よりも速く助けを求める人のもとへかけつけられるライフセーバーであるといえます。彼らやチームに掛けられるメダルは、水辺の安全のために、人の命を守れるようにと日々トレーニングに励み、強い体と精神力を鍛えていることに対する誉れとして、心の中で輝くように感じます。

自然への畏敬の念と周囲への感謝をもって

毎年、各地での予選を勝ち抜いたライフセーバーが、日本一を目標に集う「全日本ライフセービング選手権大会」が神奈川県の片瀬西浜海岸で開催されます。

3歳の頃にこの大会の応援に行き、選手たちの姿に強く感動した娘は、ライフセーバーに憧れ、小学生になってから競技を始めました。早朝は季節を問わず海に練習に出かけ、凍える真冬の海でも練習をしてから登校し、授業を受け、さらに部活もしてくるタフな生活を継続している姿は、親としても感心します。

今年は14年前から憧れ続けてきた大会に選手の一人として挑む予定でしたが、台風のために残念ながら中止となってしまいました。しかし、チームのコーチがいつも話している「自然への畏敬の念と周囲への感謝をもって臨む姿勢」をしっかりと心に刻み、また一からトレーニングを積み、ゴールの先にある「救うべき命」に真摯(しんし)に向き合ってほしいと思います。

海やプールの楽しい遊びが安全なものであるように、ライフセーバーたちは日々、志をもってトレーニングに励んでいます。夏の海でのパトロール活動が印象的なライフセーバーですが、一年中地道な努力重ねていること、そしてそれらを発揮する競技があることも、ライフセーバーの見習い中の子どもを持つ母として、ぜひ多くの方々に知っていただけたらと思っています。

【ママ特派員=神奈川県在住・稲葉祐紀子】