牛乳ではゴロゴロもヨーグルトなら平気

冷たい牛乳を飲むと、おなかがゴロゴロする体質の人がいます。原因は、牛乳の中に含まれている甘い成分「乳糖」。乳糖はガラクトースとグルコースの2つの単糖が結びついた二糖類で、小腸で消化酵素(乳糖分解酵素、ラクターゼ)が働いて分解します。

しかし、人によってはこの酵素の働きが弱く、乳糖が分解されないまま大腸を通過。腸内細菌によって分解されるのでガスを出したり、ゴロゴロして下痢したりします。これが乳糖不耐症です(乳アレルギーとは別物です)。

とはいえ、牛乳の栄養自体は大腸の前、小腸で吸収されています。また、温めたり、他の食品と一緒に飲んだりすると、刺激が少なくなるとも言われています。

ヨーグルトは、牛乳を発酵する過程で乳酸菌が乳糖を分解しているので、乳糖不耐症の人も食べられることが多い、と言われています。「おなかがゴロゴロしやすい方に」という牛乳は、工場で人工的に乳糖を分解しているので、乳糖不耐症の方でも飲むことができます。

食べると効果的な時間

ところで、ヨーグルトが「体に良い」と言われるのはなぜでしょう?

一般的に、ヨーグルトは便秘改善効果があると言われています。腸内細菌は、働きによって善玉菌、悪玉菌、日和見菌に分かれますが、乳酸菌は善玉菌の一種。乳酸菌による酸の力で悪玉菌が増えにくい環境を作ることや、善玉菌が多い腸では善玉菌と悪玉菌の腸内バランスを整え、腸を刺激して便秘を予防してくれる働きがあると言われています。さらに、悪玉菌が作り出す有害物質を吸着して排出する働きを持っています。

ヨーグルトを食べるのに効果的な時間は、腸への働きを期待するなら、腸の働きが一番働く午後10時~午前2時と、深夜に食べるのがおすすめです。そこまで遅くなくても、胃酸の力が弱まる夜の方が、腸に届きやすいと言われています。

骨や歯を丈夫にしたいなら、食前に食べる方が良いでしょう。乳酸にはカルシウムの吸収を促す効果があるからです。カルシウムやタンパク質がたっぷり入ったヨーグルト。おいしく食事に取り入れていきたいですね。

乳酸菌の種類で味も変わる

ヨーグルトを固める乳酸菌は350種類ほどありますが、通常のヨーグルトを作るのは動物性乳酸菌の「サーモフィラス菌」と「ブルガリカス菌」による発酵です。菌が違うと、風味が違ったものが出来上がります。

例えば、ケフィアヨーグルトは、乳酸菌による発酵と炭酸ガスを産生するため独特な風味があります。カスピ海ヨーグルトは、クレモリス菌とアセトバクター菌(酢酸菌)の発酵によって作られます。

最近では、豆乳から作られるヨーグルトも見かけます。これは豆乳のタンパク質と植物性乳酸菌が乳酸発酵によって固まるもので、固まる原理は一緒です。

偶然生まれた薬、食べられなければ腐敗

ヨーグルトの歴史は500年前の古代エジプト時代、牧畜が始まった頃にさかのぼります。牛から搾った牛乳を木桶や皮袋に保管していたある時、乳酸菌が入り込み、発酵して酸味のあるどろっとした飲み物に変わっていたのが、ヨーグルトの発祥と言われています。

ヨーグルトの語源は、ブルガリア語で「酸味」「力強い」という意味。日本に伝わったのは、仏教の伝来とともに7世紀。「発酵乳」として、奈良時代貴族の間では「酪」と言われた乳製品が食べられていたという説もあります。当時は高価なもので「薬」として扱われていました。

ちなみに、発酵と腐敗の違いですが。食べられなくなったら腐敗。食べられれば発酵。今や空前の発酵食品ブームで、自宅でヨーグルトや発酵ドリンクなどが作れるようになりましたが、食中毒にはご注意ください。

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