<キッチンは実験室(29):麦芽水あめの科学>

皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。第1回のキッチンは実験室でテーマにした「お絵かきホットケーキ」では、ホットケーキの生地を焦がす糖質について取り上げました。実はハチミツだけでなく、水あめやみりんでもお絵描きホットケーキを作れるのです。今回は、糖の中でも水あめのお話をしていきます。

糖質は3種類、消化吸収の早さ違う

糖質は、大きさ(分子量)に応じて、以下の3種類に分けられます。

単糖類=ブドウ糖、果糖など。消化吸収が早く、食べてから短時間でエネルギーになる。
二糖類=ショ糖、麦芽糖、乳糖など。
多糖類=でんぷんなど。ご飯、パン、麺類。消化吸収がゆっくりのため腹持ちがいい。

単糖類が2つ結びついたものが二糖類、複数の単糖類が結びついたものが多糖類。ビーズのようなイメージで、多糖類が分解されると二糖類、二糖類が分解されると単糖類になり、小さく分解されればされるほど甘くなります。

お米をよく噛むと、口の中で甘く感じたことはありませんか? それはお米に含まれる多糖類が唾液に含まれる酵素で分解されて二糖類になったため、甘く感じたのです。

お菓子もお米も同じ「糖質」。でも、お菓子は食べると一時元気になるけれど、すぐおなが空いてしまいます。一方、お米やパンは腹持ちがいいですね。

「ペットボトル症候群」やお菓子による「血糖値スパイク」という言葉を聞いたことがありますか? ペットボトルの甘い飲み物や、お菓子に含まれるショ糖やブドウ糖などの単糖類は、体内ですぐ消化吸収されて分解されるので血糖値が急激に上昇し、その後すぐに下がるという現象が起きます。お菓子もお米も同じ糖質ですが、お菓子がご飯の代わりにならないのは、これが理由の1つでもあるのです。

焦げやすい糖は「還元糖」

以前、「どら焼きの科学」や「あめ色タマネギの科学」でも紹介しましたが、加熱すると化学反応を起こして焦げやすくなるのは、化学構造の中に「還元基」がある糖(還元糖)です。みりんや水あめは、ハチミツと同じくこれに当てはまるため「お絵描きホットケーキ」ができるのです。

夏休みもあとわずか。まだ、自由研究のテーマが決まっていない! という人は、これを元にした研究をしてみてください。ホットケーキをアレンジして、中に野菜を入れた「ピタパン風サンドイッチ」にしてもいいですね。

<参考>

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