何が違う?硬水と軟水

硬水は、カルシウムやマグネシウムの金属イオンの含有量が多い水のこと。逆に少ないものは軟水と呼ばれます。

水1000ml中に溶けている、カルシウムとマグネシウムの量を表した数値を「硬度」と言います。

硬度=[Ca2+mg/ℓ×2.5]+[Mg2+mg/ℓ×4]
軟水:0~120mg/ℓ
硬水:120mg~/ℓ(WHO分類より)

東京の水道水は60mg/ℓで軟水に分類されます。海外の硬水で304mg/ℓのものもあります。軟水は比較的まろやかに感じ、口当たりが軽いのに対し、硬水は重々しく感じたり、しっかりとした飲みごたえを感じやすくなります。

硬度によって料理の味わい変わる

料理にも応用され、日本でとれる軟水は、かつお節や昆布のだしが溶け出しやすく、また野菜の水分の浸透がよく、野菜のスープや煮物も柔らかく仕上がります。ご飯を炊く時も粘り気のあるふっくらしたものになり、うま味も抽出されやすく、日本茶など甘みを味わうお茶に敵しています。

一方で、硬水は西洋の肉を煮込む時に灰汁として成分がでるので、牛肉でだしをとりスープストックを作る場合に適しています。ご飯を炊くとカルシウムが食物繊維を硬くするので、チャーハン、パエリアやピラフのような固めな料理になります。硬度が高いほど香りが抽出されやすいので、中国茶や紅茶など香りを味わうものに優れ、またコーヒーを入れる時には酸味が強く引き立ち、苦味が和らぐと言われています。

<シーン2>
作った後にボウルごと冷やしていたら、よりぷるぷるしてきた。
冷えていない牛乳で作ったら固まりにくかった。

固まる素の「ペクチン」は植物、特に果物に含まれる天然の糖質で食物繊維の1つです。以前お伝えした「固まる科学 寒天とゼラチンの使い分け/キッチンは実験室(15・上)」の科学で、主に固まる材料は3種類に分かれるとお伝えしました。

この原理からすると、ペクチンがカルシウムとプラスマイナスで引き合う力が働き、くっついて網目構造を形成。冷えると、その網目構造が余計に強く結びつき、分子の移動ができなくなるので、ゲル化状態(ぷるぷる)になります。

結果
このことから、ぷるぷるにするには冷えた牛乳で作った方がよく、また作ったものを冷蔵庫で冷やすとぷるぷる感が強まるのです。また、市販の固まるデザートには、イチゴ、ブルーベリー、メロン、ピーチ、オレンジ、リンゴ、ブルーベリーなど色々なフレーバーがあります。これらは比較的ペクチンの含有量が多い果物という共通点があります。

ペクチンが固まる原理は2パターン

今回の固まるデザート以外でも、ペクチンはジャムにも必須な成分で、凝固剤としてフルーツグミ、ケチャップ、ドレッシング、練りウニなどにも応用されています。ペクチンが固まる原理は以下の2パターンがあり、牛乳フルーツとジャムが固まる原理は違います。

(1)砂糖とフルーツの酸で固まる(HMペクチン)
(2)牛乳などのカルシウムで固まる(LMペクチン)

例えば、秋が旬の果物、柿を使った「柿プリン」というものがあります。これは熟した柿1個に対し、冷えた牛乳80mlを入れると、ぷるっとしたプリンが完成。LMペクチンが牛乳に含まれているカルシウムと反応して出来上がります。

一方で、ジャムに代表されるHMペクチンは、カルシウムとは関係なく、砂糖と酸による水素素結合で固まります。砂糖控えめのお手製ジャムを作ってみた時に、固まらなかった経験がある人はいませんか? HMペクチンが固まるには、果物の量に対して60%の糖度と0.2~0.3%の酸度(pH2.7~3.4)が必要と言われているので、糖度が低い場合は固まりません。ジャムの最後にレモン果汁を入れるのは、つや出しだけでなく、酸性度を上げるためなのです。

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