新体操選手の長女のケガから「食」を考えるようになった嶋野麻美さん(大阪府摂津市)のレポート第3回。摂取エネルギーを減らすことから「食べることはトレーニング」と意識を変えたことで、劇的な変化が起きました。

「減らす」から「摂る」へ

 「食」と聞けば、栄養やカロリーという言葉が浮かび、新体操選手は特に「カロリー」を重視してしまいます。「低カロリー」や「0カロリー」というだけで商品を購入していましたし、ノンオイルのドレッシングは必須アイテムでした。

 娘が新体操選手クラスに合格し、小学3年でケガをするまでの2年間、私は摂取エネルギー(カロリー)をどう減らして満腹にさせるのか、それだけを考えていました。学生時代、栄養摂取や代謝、消耗など勉強していたにもかかわらず、自分のものになっていませんでした。

 娘が腰椎分離症になったことから、私はスポーツ栄養を学び始めましたが、そこで気付いたのは、食を栄養やカロリーで見るのでなく、「食べる力を身につけよう」という観点。人は食べたものでしか身体を作ることはできません。大切なことを見逃していました。

 それから取り組んだことは、何かを削ったり減らしたりするのではなく、「食べることに意識を持たせる」「食べ物を受け止める身体の機能を高める」と、食べることはトレーニングと考えることでした。身体の機能を鍛えるために、娘にはよく噛むようにと伝えました。また、娘が食事を楽しみ、「おいしい」「私の力になっている」と感じられる食事作りを心がけました。

品数多い食事は受け入れ難い

 スポーツ栄養学では「基本の6皿」や「基本のフルコース」という考え方がベーシックです。①ごはん、パンなどの主食②汁物③肉や魚などの主菜④副菜⑤牛乳などの乳製品⑥果物です。

 私もこの基本の6皿を食卓に並べようと努力をしました。しかし、毎日となるとなかなか難しく、新体操選手の娘にとっては、品数が多い食事は見た目で受け入れ難いというネックがありました。

食アススタイル6:4の一例

 そこで出会ったのが、①ごはん②具だくさんの味噌汁③おかずといった「食アススタイル」です。「ごはん6:おかず4」のバランスで作ればOKで、乳製品や果物は自分のタイミングで食べればいいのです。お皿の数が少ないので洗い物は減るし、調理法も簡単で、毎日忙しくても実践しやすい。私たち母子にとって、これが一番しっくりくる考え方でした。

*<食アススタイル>*

①ごはん
 お米はエネルギーの源で脂質が少なく、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富な食材です。炭水化物と聞くと、「糖」が多く太りやすいというイメージを持たれがちですが、とても燃焼力が高いのです。よく噛んで食べると代謝もアップします。質の良い雑穀を混ぜた雑穀ごはんにすると、さらに効果的です。

②具だくさんの味噌汁
 汁物は身体を温めてくれます。具は何でもよく、緑黄色野菜、根菜類、海藻、キノコ、豆腐、イモなど。魚や肉を入れてもおいしくなります。具だくさんにすると、簡単にいろいろな食材が摂れますし、素材のだしによって、余計な調味料を使わずにすみます。日本には各地にいろんな味噌があるので味の変化を楽しむのもいいですね。

③おかず
 肉、魚、卵、豆腐などですが、おいしくごはんを食べるための「ごはんのお供」という考え方です。我が家の場合は、頭から尻尾まで丸ごと食べられるサイズのお魚が多いです。今日は疲れて帰ってきたな、という日は酢の物にするなど、その日足りなさそうな栄養を調整しています。

雑穀選びのポイントは、水に浮かない、粒にツヤがある、粒に割れや欠けがないものを選ぶこと

体温上昇、便秘改善、精神面も変化

 結果的にバランスの良い食事になっていたのでしょう。この食生活を継続することで、外面、内面ともに娘の状態が変わりました。まずは顔色が良くなり、肌の状態が改善され、子どもがもつ本来のみずみずしい感触に回復しました。ちょうど成長期と重なり、身長も1年間で13センチも伸びました。中3となった現在は163センチとなり、緩やかではありますが、まだ伸びています。

 また、平均体温が35度台から36度台に上昇。便秘症で3日間便が出ないのが当たり前だったのが、毎日2回も便通があるようになりました。この体温の上昇や便通の変化はわずか10日程度で表れたので、とても驚いています。

 本格的に食アススタイルを取り入れてから1年半になりますが、体調が整ったことで心も変化。新体操に向き合う姿勢が、ケガをしそうで「怖い」「しんどい」から、「もっと技を習得したい」「楽しい、面白い」に変わっていきました。

 このように、少しずつですが、食べることで心身ともに強く変化していく姿を見ていた新体操クラブの代表、チーフコーチの勧めもあり、今ではクラブ全体で食アススタイル「6:4」を実践しています。

嶋野麻美(大阪府摂津市)

食アスリートJr.インストラクター、健康食育Jr.マスター、キッズコーディネーションインストラクター。

大体大健康科学コースでスポーツ医学について学び、中・高等学校1種免許(保健体育)。茨木新体操クラブにて指導補助、食事指導を行っている。

中学3年の長女、小学校3年の次女は新体操、小学校5年の長男はサッカーに奮闘中。