「試合前には糖質をしっかりとりましょう」とよく聞くと思いますが、糖質を摂るなら同時にビタミンB1を摂る必要もあります。「ビタミンB1」。聞き慣れない人もいるかもしれませんが、体の中で少量でも大切な働きをしているビタミンB1とはどんなものか、お話ししていきます。

補酵素として糖質代謝の重要な役割

ビタミンB1は水に溶けやすい、水溶性ビタミンの1つで、最初に発見されたビタミンです。化学名はチアミンといい、糖質代謝に関わります。

糖質は体内に入ると、エネルギー代謝経路を通じ、エネルギーとなります。このエネルギーを作る過程で、その反応をスムーズに促すためには酵素が必要で、ビタミンB1はこの酵素の働きを助ける補酵素としてエネルギー産生に関わっています。

もう少し詳しく説明しましょう。糖質は体内でブドウ糖に分解され、ブドウ糖は血液によって全身の細胞に運ばれ、体を動かすエネルギーの素として使われます。その過程でブドウ糖はピルビン酸という物質に変えられ、さらにアセチルCoAという物質に変換され、エネルギー物質になります。このピルビン酸をアセチルCoAに変えるときに働く補酵素がチアミンピロリン酸で、これはビタミンB1が小腸で吸収された後、リン酸と結合したものなのです。

アセチルCoAが作られないとエネルギーは作られません。つまり、エネルギーを生み出すには、糖質とともにビタミンB1が必要だということになります。

試合前は糖質+ビタミンB1

一般の人よりも活動量が多く、エネルギーがたくさん必要なアスリートは、糖質とともにそれに見合ったビタミンB1をとらなければエネルギーを作り出せません。糖質だけとったとしても体内でエネルギーに変換されず、無駄になってしまいます。

「試合前の糖質」が重要視される理由は、試合で爆発的な力を発揮できるように、最後までエネルギー切れをおこさないためにと言われるものですが、実はその裏に「ビタミンB1も一緒にとっておくこと」が隠されており、大切なことなのです。

ビタミンB1を多く含む食材

ビタミンB1を多く含んでいる食品としては、玄米、全粒粉、豚肉、レバー、ウナギ、タラコ、サケ、豆類などがあり、特に豚肉には多く含まれています。穀物ではぬかの部分に多く含まれているため、精白米などぬかをほとんど取ってしまうものは少なくなってしまいます。

ビタミンB1はタンパク質を多く含む食品に多いため、タンパク質源となるおかずを意識して食べることで、ある程度の量を確保できます。水溶性のため、とり過ぎた分は排泄されるので過剰症になることはほとんどありません。

今回はビタミンB1を多く含む「豚肉スペアリブの柔らか煮」を紹介します。普通の鍋では1時間ほどコトコトと煮込み時間がかかりますが、おいしく出来上がるのは楽しみですよね。お皿に盛り付けると、ボリュームも出て華やかな1品になりますね。

管理栄養士・舘川美貴子