食物アレルギーのお客様を受け入れるホテルの料理人から時々、「野菜のアレルギーの方が数日後に宿泊されるけれど、アレルギーではなくて好き嫌いですよね?」と質問されることがあります。「野菜でアレルギー症状が出る」というイメージが湧かないのでしょう。皆さんはいかがでしょうか。

調査報告によると、野菜の即時型アレルギーとしてはヤマイモ、ナガイモ、フキノトウ、トマトが挙がっており、ヤマイモはアレルギー表示の推奨品目にも含まれています。皆さんは「ヤマイモ」と聞いて、何を思い浮かべますか。誤解を生みやすいアレルギー物質の1つでもあるため、詳しく説明していきましょう。

ヤマイモは「ヤマノイモ」の総称

まず、ヤマイモは日本標準商品分類でいう「ヤマノイモ」のことで、ナガイモ(長芋)、自然薯(じねんじょ)、大和芋などの総称です。ナガイモとよく混同されますが、同じ科であっても見た目も味も粘りも異なり、厳密の分類では別の野菜になります。

ナガイモ
ナガイモ
ヤマイモ(自然薯)
ヤマイモ(自然薯)

ヤマノイモ種は植物分類学上では自然薯を差し、野生種は自然薯、栽培種はナガイモといわれています。ヤマイモは強い粘りを生かし、すりおろしてとろろとして使用するのにお勧めとされる一方で、ナガイモはサクサクした食感を生かして、サラダや和え物として使用することが多いものです。

「イモ」でもジャガ、サツマと別分類

アレルギーの推奨表示は「ヤマイモ」のみですが、ナガイモ、ヤマトイモ、自然薯、ツクネイモ、イチョウイモも対象となっています。イモのアレルギーがあると、「ジャガイモ、サツマイモなども含めて『イモ』とつく野菜は全て同じ仲間ではないか」と食べるのを躊躇してしまう人も出てきますが、そうではありません。イモの分類は以下の通りで、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモとヤマイモはそれぞれ異なる品種です。

主なイモの分類
主なイモの分類

ヤマイモにアレルギー反応が出ていたとしても、ジャガイモやサツマイモなど他のイモ類ではアレルギー症状が出ないこともあります。アレルギーではない場合は不必要な除去を控えましょう。

品種によってもアレルギーの出方が異なります。また、「皮膚のかゆみ程度なら多少食べても問題ない」と思っている人もいるかもしれませんが、皮膚症状以外に呼吸器症状や消化器症状も出てくることもあります。食べてみて様子がおかしい場合は医療機関を受診して、アレルギーなのかどうか確認をしておきましょう。

ナガイモのかゆみは別の原因も

なお、ナガイモは食物アレルギー以外でも不調症状が出ることがあります。ナガイモや自然薯の皮をむいた時、とろろを食べた後に、手や口の周囲がかゆくなったことはないでしょうか。

かゆみの原因は、シュウ酸カルシウムかもしれません。ナガイモをすりおろすと細胞が壊れ、シュウ酸カルシウムの針状結晶が外に飛び出し、皮膚に刺さるためです。予防や対処として、流水で口の周囲を洗う、皮をむいた後に酢水に浸す、中心部をすりおろすなど工夫すると、症状を少し抑えられる可能性があります。

以前のコラム「とろろやトマトのかゆみの原因は?解毒力あるアスパラガスでアレルギー対策」でお伝えしたように、アセチルコリンが原因の場合もあります。

ナガイモに触れて皮膚のかゆみが出ても、全てが食物アレルギーではありません。アセチルコリンなどの仮性アレルゲンが原因となる症状は、IgE抗体検査というアレルギー検査で陰性の結果が出てきます。除去をする前に、気になる症状が出た際には医療機関で診断を受けておきましょう。

今回紹介するのは、旬のサツマイモを使用した「簡単作り置き!サツマイモとそぼろ煮」です。

ひき肉とジャガイモを組み合わせた料理はよく見かけると思いますが、実はサツマイモも相性抜群です。サツマイモには、ビタミンC、食物繊維、抗酸化作用のあるクロロゲン酸などが含まれています。食物繊維は皮に多く含まれているので、腸内環境を整える意味でも皮はそのままにして調理すると良いでしょう。

管理栄養士・乳井美和子、小高鏡子