アスリートと話をすると、「野菜がとれていないので、マルチビタミンを飲んでいます」「バランスの良い食事は難しいので、サプリメントで必要量をとります」と聞くことがあります。食事に対する意識が低いわけではなく、むしろ意識が高いため常用する選手もいます。

確かにサプリメントは手軽で便利ですし、食事から必要な栄養素が摂取できない場合は、利用するのは間違いではありません。ただし、栄養素は必要量を摂取すればいいというわけでなく、きちんと体内で消化吸収されて活用されることが大切です。取り過ぎれば過剰症になることもあります。

体内で消化吸収されるか

例えば、空腹時に食事を目の前に置かれれば、自然と唾液が出て、体が消化吸収の準備をしますが、サプリメントを目の前に置かれても唾液が出ることはほぼないでしょう。もちろん、消化吸収力の高いサプリメントもあるでしょうが、食事でとる方が効果的です。食事からとる分には、特定の栄養素を「過剰症」と言われるほど大量摂取することはありません。

食事でとれる成分は

また、サプリメントは既知の栄養素のみ商品化されています。食品には、いわゆる5大栄養素やよく知られる栄養成分以外の未知の成分、例えば微量栄養素、ポリフェノール、 食物繊維や、炎症の軽減や免疫耐性の促進、神経保護強化を通じてプラスの効果が期待される生物活性化合物質といったものが含まれていますが、これらはサプリメントとして商品化されていません。つまり、食事から自然ととれている成分を、サプリメントだけに頼った生活ではとることができないということです。

このようなことから、エネルギーや栄養素は食事から補うこと。ただ、状況によって不足している栄養素がある場合はサプリメントで補うようにしましょう。

今回は「ツルムラサキの生ハムあえ 」を紹介します。夏が旬の緑黄色野菜、ツルムラサキはゆでると独特のぬめりがあります。苦味が少ないので、栄養価を逃さないようさっとゆでるのがポイント。生ハムの塩気でおいしく食べられます。

参考文献:Close GL, Kasper AM, Walsh NP, Maughan RJ. "Food First but Not Always Food Only": Recommendations for Using Dietary Supplements in Sport [published online ahead of print, 2022 Mar 12]. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2022;1-16. doi:10.1123/ijsnem.2021-0335

管理栄養士・田澤梓