運動前や運動中に、補食などでエネルギーを補給することは大切です。特に、運動時間が長い時や運動強度が高い時は欠かせません。

エネルギー補給のため糖質を摂取すると、一定量は消化吸収後、血液中に放出され、血糖値を上げますが、一度に大量摂取して消化管の吸収能力を超えてしまうと、消化管に糖質が溜まってしまう状態になります。その結果、その糖質を希釈するために血液から消化管へと水分が移動して血液量が減少し、発汗や活動している筋肉への栄養素の供給、老廃物・代謝産物の回収が滞ってしまいます。運動前、中の糖質摂取は一度に大量ではなく、「少しずつ、こまめに」が望ましいでしょう。

1回に摂取する適当な量とは

では、どのくらいの量が適当なのでしょうか。

1回の運動時間が75分以内であれば、運動中の糖質補給は少量で構いません。糖質の補給目安量は1分あたり1g未満となっているので、糖質の濃度が4~8%のスポーツドリンクを1時間あたり0.6~1.2L飲む程度でよいでしょう。

運動を継続的に1~2.5時間行う時は、1時間あたり30~60gの糖質補給が目安になります。ゼリー飲料は糖質の含有量が1個45g程度、バナナは1本で20g程度なので、2時間の運動であれば、ゼリー飲料1個とバナナ1本が目安となります。消化が良く、すぐにエネルギーに変わるものを選ぶようにしましょう。

今回は「チーズの干し柿包み」を紹介します。市販の干し柿にシソとチーズを挟んだもので、1個で約36gの炭水化物が補給できるので、1時間の運動で必要とする糖質量をまかなえます。

干し柿はビタミンAや糖質が豊富で、調理の手間なく食べられるので補食に最適です。常備しておくとよいでしょう。

参考文献:スポーツ栄養学ハンドブック ダン・べードット著 寺田新訳 東京大学出版会 2021

管理栄養士・田澤梓