暖かい日が多くなってきて、脱水にも注意が必要な時期になってきました。運動中に熱を体外へ放散する仕組みは、実は大人と子どもでは異なっていることをご存じですか。

手足などの末梢血管からの熱放散

大人は発汗によって多くの熱を逃がしていきますが、子どもは手や足などの抹消血管からの熱放散に依存しています。定期的にトレーニングを行うジュニアアスリートはさらに、末梢血管が拡張され、発汗以外による熱放散の仕組みが強化されているのです。

体温調節のメカニズムが子どもから大人の仕組みへと移行するタイミングは、思春期の発達に関連している可能性が高いものの、これらの変化は生理学的には、思春期が完了するまで明らかにはならないそうです。

ナトリウム濃度や損失量が大人より低い

では、汗の質も違うのでしょうか。

子どもの汗は、大人に比べてナトリウムの濃度や損失量が低いことが分かっています。そのため大人と同じように、ナトリウムを含むスポーツドリンクを大量に飲む必要はないとも言われていますが、汗をたくさんかいたり、暑熱環境下で長時間運動したりする時などは、水や麦茶だけの補給では危険です。

また、長距離など持久系種目の選手で、靴がぐっしょり濡れるくらい汗をかくアスリートもいたり、競泳などの水泳競技では水中トレーニングによって体の熱を発散させることができたりと、発汗の状況は競技や個人によって違います。一般的に「水分補給の方法」として知られている内容は、大人を中心に設定されているものなので、子どもに水分補給させる場合は、それと全く同じ考え方や方法ではなく、体調、気温、湿度、運動量、運動時間などに注意しながら個別対応することが必要です。

今回は、食事からも水分補給のできる「シーフードスープ」をご紹介します。冷凍シーフードミックスとジャガイモ、ニンジン、タマネギなどの常備野菜を使った牛乳ベースのスープは、適度な甘さと塩分が加わり、子どもも好きな味となっています。急な発汗による脱水予防にも役立ちます。

参考文献:Desbrow B, McCormack J, Burke LM, et al. Sports Dietitians Australia position statement: sports nutrition for the adolescent athlete. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2014;24(5):570-584.
Meyer F, Volterman KA, Timmons BW, Wilk B. Fluid Balance and Dehydration in the Young Athlete: Assessment Considerations and Effects on Health and Performance. American Journal of Lifestyle Medicine. 2012;6(6):489-501.

管理栄養士・田澤梓