東京五輪の柔道で、男子66キロ級の阿部一二三(23=パーク24)と妹で女子52キロ級の詩(21=日体大)が、同日に金メダルの快挙を成し遂げた。性別の異なるきょうだいが五輪のメダルを取るのは日本初。

詩は決勝でライバルのブシャール(フランス)に延長の末、一本勝ち。52キロ級で日本初の金メダルを獲得した。一二三は決勝でマルグベラシビリ(ジョージア)に優勢勝ち。66キロ級では08年北京五輪以来となる3大会ぶりの金メダルとなった。

男子66キロ級の阿部一二三(左)と女子52キロ級の阿部詩は金メダルをかむしぐさを見せる(撮影・パオロ・ヌッチ)
男子66キロ級の阿部一二三(左)と女子52キロ級の阿部詩は金メダルをかむしぐさを見せる(撮影・パオロ・ヌッチ)

一二三は赤身、詩はセンマイ

阿部きょうだいのパワーの源は肉だ。神戸市の実家近くの創業50年以上の焼き肉店「岬園」には帰省する度に立ち寄り、思い出の味に舌鼓を打つ。

同店は父浩二さんが子供の頃から訪れていた名店で、好きな食べ物が焼き肉の2人も高校時代までは試合前後に家族で頻繁に訪れた。阿部家の「鉄板ルール」は、浩二さんが家族全員分を注文する。一二三、詩は大盛りご飯を片手に、大皿に盛られたハラミやロースなどの大量の肉を絶妙なタイミングで焼いて白米をかきこむ。特に一二三は赤身肉を好み、生センマイ(胃)が好物の詩は「コリコリした食感が大好き。高校時代は試合に勝っても負けても食べていた。今の流行は白センマイ」と言うほどだ。締めは冷麺1つを家族で分け合う。

店主の金村義男さん(79)は「2人は孫みたいなもの。つまみのセンマイはお父さんが注文するから詩も好きになったんだろう。きょうだいのパワーの源は焼き肉のおかげや」と優しくほほ笑んだ。

店内には阿部きょうだいの写真やポスターなどが飾られ、中央の柱には近所の子供たちの名前と身長がマジックで多数記されている。そこには、「うた」「一二三」の名前もしっかり刻まれている。まさに、阿部きょうだいの“パワースポット”だ。【峯岸佑樹】

(2021年7月26日、ニッカンスポーツ・コム掲載)

<関連コラム>
柔道阿部兄妹金メダルの陰に、3きょうだい長男勇一朗さんの癒やしがあった
柔道日本の人間関係丸わかり!男女最強布陣の人物相関図
柔道選手のためのレシピ&コラム