5大会連続でオリンピックに出場するホッケー女子日本代表の「さくらジャパン」が、東京五輪で悲願のメダル獲得を目指している。18日に選手村に入り、25日の初戦・中国戦に向けて万全の体調を整えている。

さくらジャパンのメンバー
さくらジャパンのメンバー

3年前から管理栄養士の栄養サポート

今大会を見据え、2018年度からチームの管理栄養士として日大スポーツ科学部の辰田和佳子准教授に栄養支援を受けてきた。初年度の講習会では各自の食生活の実態の整理と問題抽出を実施。各選手ともに目標設定を行い、翌年度から個別面談を受けながら食生活の改善と、目標とする体作りのための食事を継続できるよう努力してきた。

辰田准教授によると、ホッケーだけではなく、女子アスリートによくみられる課題は疲労回復に必要な「主食量をしっかり摂ること」だという。主食が少ない分、嗜好品を多くとる選手はその結果、体重や体脂肪が多くなることもあり、辰田准教授は「食事、特に主食をしっかりとるように」とさくらジャパンの面々にも言い続けてきた。

毎食ごとに携帯で食事写真を撮って、何がどの程度不足しているか、何を減らすべきかアドバイスをもらってきた選手、厳しく叱られることでモチベーションが上がる選手、ほめられると頑張る選手、タイプはそれぞれだが、食事バランスを整え、厳しいトレーニングに耐えられる体作りを行ってきた。

ごはんの量でエネルギー摂取量を調整

ホッケー女子日本代表は体重40kg台~60kg台と体格差が大きい。その日の練習量にもよるが、平均して1日2500kcalのエネルギー摂取を目標に設定。1回の食事におけるごはん量は昼食で250g、夜は180g(練習後におにぎりやゼリーなどの補食をとった場合)を目安とし、体格差によってごはん量の増減でエネルギーを調整するようにしてきた。

食事量が適切かどうかは、毎日の体重計測で確認。食事とトレーニングのバランスが合い、体が絞れた感覚をつかめ、パフォーマンス向上を感じられた選手は、食事への意識も強く向くようになる。チーム内でお手本となる選手も現れ、そういった選手が後輩たちにメリットや工夫を伝える姿も見られるようになったという。

「食行動改善そのものは比較的早くできるのですが、大変なのは継続すること。自分で考えて食事を調整できるようになるために、具体的な例を示して後押ししてきました。まだ改善点の残る選手もいますが、以前よりは考え、行動している選手も増えてきたと思います」(辰田准教授)。

「シャンティカレー」も合宿期間に協力

6月22日~7月6日には、本番会場となる大井ホッケー場(品川区)で強化合宿を行った。緊急事態宣言下ではなかったものの、コロナ禍での食事の確保は困難で、結局、品川区でケータリング事業も行う飲食会社「シャンティカレー」に2週間3食、選手、スタッフ合わせて24~28人分の食事提供を依頼した。合宿1週間前のことだった。

辰田准教授から提示された要望は次のようなもので、シャンティカレーの調理担当、小林翔太さんはそれらの対応を一手に引き受けた。

<主な要望>
・鉄が豊富なメニュー(貧血予防)
・特に昼食は脂質の多い料理を控えめ(練習の合間で消化の問題もあるため)
・疲労回復効果が期待できるビタミンB1を含む豚肉メニューを入れる
・ごはんのおかわり、納豆の自由摂取ができること(エネルギー摂取量の調整ができるように)
・ヨーグルトをつけること
・ごはんの進む味付けの料理があること

100人規模のパーティーやイベントでの食事提供は行っている小林さんだが、アスリート向けの食事を2週間、同じメニューにならないように組み立てるのは初めて。また、練習の合間となる昼食はタイトスケジュールでも食べやすい丼ものや、暑熱環境下の練習後のために冷たい麺類と指定された。

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