レスリング高谷「8キロ以上は階級上げた方が良い」

減量がつきものの競技に挑む選手は、試合直前の過酷さを当たり前と捉える傾向は根強いが、レスリング界ではその慣例打破を掲げる選手がいる。男子フリースタイル86キロ級の高谷惣亮(32=ALSOK)は「体重の4%を超えると体にダメージが残る。8キロ以上は階級を上げた方が良い」と中高生に助言を続けている。

高谷惣亮の74キロ級当時の肉体。約10キロの減量が必要だった
高谷惣亮の74キロ級当時の肉体。約10キロの減量が必要だった

体験談がある。12年ロンドン、16年リオデジャネイロの2回の五輪は74キロ級で戦った。最大減量幅は10キロ。めまい、手に力が入らないなどの症状の経験がある。そして何より「体重を落とすために、休むことが恐怖になる」。精神面のダメージが大きかったという。

18年1月から国際連盟が計量を前日から当日に変えた。従来は前日からの体重の戻し幅が勝負の分かれ目だったが、短時間ではもう戻せない。転機になった。「10キロ減らすので、戻らないですよね。それでは戦えない」。階級を上げた。

すると故障もしなくなった。効用を感じるからこそ、いまは「自分が勝てば、ナチュラルに近い階級でも勝てると思ってもらえる」と使命感がある。4月上旬のアジア予選では57キロ級の樋口黎が計量オーバーで失格になる姿も目の当たりにした。自身は準決勝に惜敗し、5月の世界最終予選に3度目の五輪をかける。【阿部健吾】

(2021年4月20日、ニッカンスポーツ・コム掲載)