自主性に任せ強制なし、3食をしっかり

現在は、ご飯を朝600グラム2杯、昼800グラム、夜は700グラム2杯が目安。選手の自主性に任せ、あえて強制はしない。体が細い選手は、朝、ご飯を2リットルの保存容器に詰め登校。授業の合間に食べている。実際、夜食を食べたときと、体重を比較したところ変化がないことがわかった。「それなら健康的に腸を休めた方がいい」と、現在は3食をしっかり取っている。

山盛りご飯を盛るのもお手のもの。我れ先に、とよそっていく
山盛りご飯を盛るのもお手のもの。我れ先に、とよそっていく

寮の食堂も、全面的にバックアップしている。調理を担当している株式会社童夢の島田正信さん(59)は「良質な筋肉とパワーをつけさせるために、タンパク質、ビタミン、ミネラルとバランス良く取れるようメニューを作っています」と話す。

2リットル保存容器のご飯を、毎日学校に持っていき食べている林燦投手(2年)
2リットル保存容器のご飯を、毎日学校に持っていき食べている林燦投手(2年)

1日の総カロリーは4200~4700が目安。食べやすいように週に2~3回は麺類も入れ、水曜日の昼、日曜日の夜は選手が好きなカレーと決まっている。島田さんは「これからもおなかいっぱい食べてもらえるように調理したいです」と力を込めた。

現在では「広陵の選手は、広島で一番大きく強い」と評判の体格となった。「うちの選手たちは『食べ力』はあると思うんです。食べる子は夏にバテない。食が細い子は強化練習中に負けてしまいますから。ケガも減りましたね」と、中井監督はその効果を実感している。夏は準優勝4度、悲願の頂点へ。その道を、着々と歩んでいる。

食育の原点は「笑顔で完食」

広陵の食育の原点は「笑顔で完食」だ。お昼、清風寮の食堂からは、中井監督と選手たちのにぎやかな笑い声が聞こえる。

「オマエ、よう食べよるなぁ。ええぞ」「あれ、オマエは元気ないな。体調でも悪いんか?」

笑顔で食事をする選手たち。「入学してから7キロも増えました」と村上永剛主将(写真右)
笑顔で食事をする選手たち。「入学してから7キロも増えました」と村上永剛主将(写真右)

1、2年生(3月現在)106人がそろっての昼食。その中で中井監督やスタッフも一緒に食事を取る。前の席とはパーテーションで区切り、コロナ対策をする中での楽しい会話。中井監督は、練習以外で貴重なコミュニケーションの場として、選手たちと昼食を一緒に取るのが習慣だ。「僕のキャラにも合うし。顔を見たらわかるでしょう。こいつ、元気ないのぉ、とかね」。

ズラリと並ぶ山盛りご飯も、選手たちはペロリとたいらげる
ズラリと並ぶ山盛りご飯も、選手たちはペロリとたいらげる

グラウンドでは厳しい監督が一変、冗談を交えながら声をかけてくれるだけに、選手からは自然と笑みがこぼれ食も進む。村上永剛主将(2年)は「まだ1年でレギュラーを目指していたとき、昼食で中井先生に『チャンスはくる。調子が上がってくるときもあるから頑張れ』と声をかけてもらって、頑張ろうと思いました。先生と食べると楽しいですよ」と選手の士気も高めている。

食事中の楽しい会話は、最高のスパイスだ。消化や吸収アップ、食欲にもつながるともいわれている。骨の多い魚が並べば中井監督自ら「ええか、魚はこういうふうに食べるんじゃ」と手本を見せることも。選手たちは興味津々。今では選手たちの好き嫌いもなくなった。中井監督は「食堂の方々に作っていただいたものを『笑顔で完食』ですよ」と笑う

たくさん食べるだけでなく、楽しくおいしく。笑顔あふれる食卓が、選手たちをひとまわり強くする。【保坂淑子】

◆広陵 1896年(明29)設立の私学。校訓は質実剛健。野球部は1911年創部。甲子園出場は、春24度で優勝3度、夏23度で準優勝4度。主なOBは前阪神監督金本知憲、広島野村祐輔、レンジャーズ有原航平ら。所在地は広島市安佐南区伴東3の14の1。

(2021年3月22日付、日刊スポーツ紙面掲載)