ウエイトリフティング(重量挙げ)の高校81キロ級で、宮城農(宮城)の佐藤駿太郎(3年)が日本一に輝いた。コロナ禍の今年度はインターハイ、国体などすべての全国大会が中止になったが、地道なトレーニングを続け、8月の宮城県代替大会でスナッチ128キロ、ジャーク145キロの自己ベストのトータル273キロを記録。この数字を全国通信記録会に提出したところ、10月に全国1位が認定された。

次の目標に向け、引退後も練習を続ける佐藤。ブランクを空けないよう、短い時間でも毎日挙げることを課題にしている

父が監督、兄康太郎に続く快挙

宮城農としては2018年、69キロ級で高校記録を樹立した兄康太郎(早大2年)に続く快挙。監督で92年バルセロナ五輪60キロ級の選手だった父和夫さんは「感染拡大による休校を経験したが、県の代替大会に向けて持ち前の努力を続け、兄に負けない結果を出してくれた」と賛辞を送った。

父の佐藤和夫監督は最大の理解者。「兄と比べられることが多いが、弟の駿太郎の長所はスピード力と努力できる心」と期待している

休部中、公園の遊具を使って体力維持

「家で自主練習ができない競技なので、選手たちは苦労したと思います」。和夫さんは部活ができなかった休校期間を振り返った。

休部中、選手たちは部から借りたシャフトやプレートを使って自宅トレ―ニングに切り替え、フォームのイメージトレーニングにつなげた。自宅トレに加え、佐藤は近所の公園の雲梯(うんてい)を使った懸垂や、坂道ダッシュなどをして体力を維持。体重も81キロ前後をキープした。

「ウエイトリフティングで大切なのは、背中の筋力」と佐藤監督。体脂肪率を減らしすぎないよう気を付けながら身体づくりを行っている

魚のほか毎日納豆と野菜たっぷり

食事面では母明代さんが「ストイックな兄と違って駿太郎は好きなものを自由に食べるタイプ」と言いながらも納豆を毎日食べさせ、野菜多めの献立に。自ら釣り上げた三陸沖のタコやヒラメ、高級魚のナメタガレイを調理するなどして、鮮度のいいタンパク源を食卓に並べてきた。

母明代さんが三陸沖で釣ったマコガレイ。ナメタガレイとともに人気の魚で、唐揚げに調理して食卓に並べた

「ウエイトリフティングの体作りは、脂肪を絞りすぎないところも重要です。ケガ予防のためにも、20%くらいの体脂肪率があってもいいんです」と和夫さん。好物のスイーツも無理な我慢はさせなかった。

初心者の新入部員が8人入部

部でうれしい出来事もあった。休校明けの6月上旬、8人の新入生が入部した。そのほとんどが未経験者だったことも驚きだった。「オリエンテーションで上級生が面白さをPRして、チラシを配ったり、声かけした効果が出ましたね。初心者から始めると、あっという間に体が変わってうまくなるので、その変化量の大きさがやりがいにつながるんです」。

部員21人の宮農ウエイトリフティング部。8人の新入生が入り、自分で決めた努力目標に向かって楽しく練習を行っている

3年生6人全員が県大会で優勝

3カ月近く遅れてのスタートとなったが、新入生の熱意も追い風となり、3学年21人で気持ちを高めることができた。県代替大会では、女子55キロ級の中里真子(3年)も県高校新記録をマーク。「3年生6人全員が県で優勝を果たしました。このうち3人は県の新記録樹立です。全国大会がなくなり、通信記録会(県大会の記録から上位を選出)という形になってしまったが、3年生は気持ちを切らさず頑張り続け、全員優勝という結果につながりました」と生徒たちの頑張りを称えた。

強豪校・日大を選んだ理由は「練習会に参加した時、雰囲気がとてもよくて『挙がりやすそうな環境だな』と直感で思ったからです」

佐藤は「自己新記録が出たことで、より上のレベルを目指そうと思った」と、大学7連覇中の名門・日大への進学を決意。20歳以下の日本ジュニア代表入りを狙う。コロナ禍を乗り越えた経験を自信に変え、目線の先にあるのは兄とともに狙う2024年パリ五輪代表入りだ。【樫本ゆき】