小学生から強打者の片りん

以降も、スラッガーまでの道のりを見守り続けた。最初に所属した甲東ブルーサンダース(兵庫)時代から、飛行機で何度も応援に駆けつけた。「打撃は周りの子たちと違った。淡い期待だったが、もしかしたら(プロ野球選手)あるんじゃないか、と」。飛距離は別格で、校庭のフェンスどころか、3階建小学生から強打者の片りんて校舎を飛び越えたこともあった。を感じていた。

阪神ドラフト1位佐藤が体作りに利用したテニスコート横のゴムチューブを引っ張る祖父勲さん。右は祖母美智恵さん(撮影・中島正好)
阪神ドラフト1位佐藤が体作りに利用したテニスコート横のゴムチューブを引っ張る祖父勲さん。右は祖母美智恵さん(撮影・中島正好)

勲さんは佐藤の関西学生野球リーグ戦全出場試合のうち、約8割を現地応援した。時には大学の練習、日本代表合宿が行われた四国にも足を運んだ。「気にならないように」と、外野席から静かに見守る日もあった。今年はコロナ禍で2試合のみで、「試合を見ていると疲れも取れるけど、本当に寂しかった」。それでも今年初観戦となった18日関大戦で、リーグ記録を更新する14号の瞬間に立ち会えた。美智恵さんは「打席に立っていると、こっちまで緊張しちゃう。打った瞬間は、みんなで抱き合って、喜んだ」。スタンドには親族9人が駆けつけ、歓喜を分かち合った。

合宿所に届けた米とウナギ、時には銘菓も

食育でも孫を支えた。今は貸しているが、所有する水田では宮城のブランド米「ひとめぼれ」が栽培されている。2カ月に1度、ひとめぼれ30キロを大好物のウナギとともに合宿所に届ける。食は体に似合わず細いといい、好みは肉よりも魚、そして甘党だ。美智恵さんは「『ずんだ餅が食べたい。送ってくれないか?』というメールが届くこともあります(笑い)」と、おねだりされることもしばしば。ずんだ餅、萩の月、こだまのどら焼き、つつみ屋の団子-。宮城の有名銘菓も大好物だ。父譲り187センチ、94キロの体と規格外パワーの源は、祖父母のサポートもあってこそだった。

父博信さんが小学校時代に投球練習した元マウンド付近に立つ祖父勲さん(撮影・中島正好)
父博信さんが小学校時代に投球練習した元マウンド付近に立つ祖父勲さん(撮影・中島正好)

勲さんは、金田正一氏らが在籍していた国鉄時代からのヤクルトファン。佐藤については「まだまだ、スーパースターの域ではない。守備や走塁も含めて、もっとやってくれないとダメだね」と辛口評。「左の豊田(泰光)さん(元西鉄内野手)みたいになってくれれば、って感じだな」と、往年の名選手を目標に挙げた。大観衆の甲子園で輝く日を心待ちにしながら、テルの勇姿を見守っていく。

(2020年10月30日、ニッカンスポーツ・コム掲載)