ラグビーは、競技中の接触プレーや転倒などで、肩の関節が外れる「脱臼」や、完全に外れてはいないもののズレが生じた状態となる「亜脱臼」が非常に多いスポーツだ。

一度、脱臼や亜脱臼を受傷すると、クセになりやすく、約半数の選手が1シーズンで再脱臼を起こしていることが分かっている。また、肩関節を構成する肩甲骨の関節窩と上腕骨が欠ける「骨欠損」を生じ、完治させるためには手術が必要だが、繰り返すことで骨欠損が大きくなり、関節唇形成術という標準的な手術では対処できなくなる恐れもある。

順天堂大学大学院医学研究科のグループ

では、具体的に何回繰り返すと、骨欠損が危険な大きさになるのか。

このたび、順天堂大学大学院医学研究科、整形外科・運動器医学の金子和夫教授、川崎隆之准教授、長谷川圭紀医員らの研究グループは、利き手側で「4回」、非利き手側で「5回」が危険な回数であるとの研究結果を発表。同時に「3回まで」を早期とし、医療機関でのCT検査で肩の状態を確認し、適切な治療を受けることが、手遅れを防ぐ手だてと報告した。

研究報告をする(左から)長谷川医員、川崎准教授、金子教授

研究の対象となったのは、2011年~2016年の間に肩関節脱臼の治療のために順天堂医院を受診した高校生から30代の男女ラグビー選手で、競技レベルでプレーをし、復帰を望み、手術歴のない144肩(144人)。CT検査で肩関節の骨欠損の程度を評価し、分析したところ、上記の回数を見いだした。

利き手側と非利き手側で回数が違う理由は、タックル時の衝撃が利き手側の方が強いことが想定される。ただしプレーレベル、カテゴリー、ポジションなどの特徴についての関係性は表れなかった。

放置するとキャリアに影響及ぼすことも

実際の競技現場では、脱臼・亜脱臼をしても、医療機関を受診せずに様子を見たり、我慢したりする選手がしばしばいるという。特に、亜脱臼は痛みが強くないため、放置してしまう選手が少なくない。

その結果、標準的な手術で対応できなくなったり、術後、不満を抱えやすい状態になり、キャリアに影響が及んでしまう選手もいる。そのようなことを防ぐため、川崎准教授は「亜脱臼も脱臼と同じと考えて欲しい。『脱臼なんてこんなもの』と安易に考えず、誤った解釈で放置せず、治療して欲しい」と警鐘を鳴らした。

なお、脱臼した肩を無理に元に戻すことによっても、骨欠損が生じることもあるという。回数にとらわれず、受傷したら即、医療機関を訪れることが大切だ。

【アスレシピ編集部・飯田みさ代】