余裕と同時に課題も見える2年目
無我夢中だった昨年に比べ、少し余裕が出てきた今年は「色々と目につくようになった」と、安原さんの視野も広がってきた。貯金を切り崩して自費で業務用の体組成計を購入し、月1回の計測をスタートさせた。
同時に悩みも増えている。夏場の体重減を意識して脂質比をやや高めに設定した食事にしたせいか、体脂肪率の高めの選手が何人か出たことも分かった。「どういう時に体調が変化するのか、個々に対応しなくてはいけませんね」。管理する側としての課題も見えてきた。
「私が食事でチームを変える」の執念
スポーツに関わる管理栄養士を目指す学生も増えているが、実際にはその間口は狭い。そんな中、安原さんは、執念でこの場にこぎつけた。
栄養の世界を目指したのは中学時代。給食委員となり、栄養教諭に憧れた。野球は好きだったが、高校では進学クラスで、2008年夏の甲子園で準優勝に輝くなどの実績を持つ野球部との接点はなかった。「当時は遠くから見るだけでしたが、同級生はケガ人が多くて3年間1度も甲子園に行けなかった。それを見ていてもどかしくて、やり切れなかった」。その思いがいつしか自分の中で結び付き、「私が食事でチームを変える」という決意に変わっていった。
片道6時間かけて毎週練習見学
「自分の性格はしつこい」と表現するが、その情熱は尋常ではない。
父親の赴任先の兵庫県にある神戸女子大に進学。毎週末、菊川まで片道6時間かけて約2時間の練習を見学した。特定の「推し」がいたわけではない。純粋に、このチームが好きだった。「高校でやり残したことがある」「青春を取り戻すために」と通い続けた。
初めは反対していた家族も、協力的になっていった。地元のファンやOBやOBの保護者にも受け入れられるようになり、応援団のアイドル的存在に。大学の機材を借りて選手の体組成や骨量、ヘモグロビン推定値を計測し、食事調査をするなど、チームにも自分の存在をアピールし続けた。ただ、雇ってもらうには至らなかった。
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